診療支援
治療

血液・造血器疾患を理解するためのポイント
神田 善伸
(自治医科大学教授・血液学)

ざっくりわかる血液・造血器疾患

 血液・造血器疾患を勉強するには,まずは正常の造血機構を理解し,そこにどのような異常が加わったために疾患が発生しているのかを考えていくことが重要です.体内でなんらかの変化が生じようとすると,それに抗して恒常状態を維持しようというように生体は反応します.その機構が破綻したときに疾患が発症するのです.例えば溶血が生じた際には,酸素運搬能を維持するために赤血球の産生を増やして赤血球数の低下をとどめようとします.この反応は血液検査では網赤血球数の増加として把握することができます.遺伝性球状赤血球症の患者さんは,安定している状態では赤血球数やヘモグロビン値は正常,しかし網赤血球数は増加しているという状態にあります.溶血で失われていく赤血球と産生される赤血球が均衡状態を保っているのです.しかし,感染症などを契機に溶血が増悪すると,この均衡がくずれて貧血を生じます.溶血の増悪は血清ビリルビン値の上昇や血清LDH値の上昇で評価することができますし,貧血の増悪は赤血球数,ヘモグロビン値の低下としてとらえることができます.

 このような考え方が身につくと,診療現場に出てからの診断にも役立ちます.貧血の患者さんがいたら,その鑑別診断を考えるうえでは2つのアプローチがあります.1つは赤血球の大きさ(MCV)からのアプローチ,もう1つは網赤血球からのアプローチです.前者は純粋に大球性貧血をきたす疾患,正球性貧血をきたす疾患,小球性貧血をきたす疾患の知識が求められますが,後者はより病態に基づいた考え方です.すなわち,まずは貧血が赤血球産生の低下によって生じているのか,赤血球の消費(溶血,出血など)の亢進によって生じているのかという観点から鑑別診断を進めていくのです(図8-1)

A 腫瘍性の血液疾患

 皆さんが学生として病棟で実習する,あるいは研修医になって病棟で勤務するよ

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