疾患を疑うポイント
●特異的な症状がなく,検査値異常などで偶然発見されることが多い.
●全身倦怠感,意識障害などがあれば,鑑別診断の1つとして念頭におく.
学びのポイント
●大多数はNaバランスの異常ではなく水分バランスの異常である.
●血漿浸透圧から高・等・低浸透圧性低Na血症に分けられる.
●低浸透圧性低Na血症は「高自由水血症」ともいうべきもので,水排泄障害のため過剰に自由水が貯留した状態である.
▼定義
血清ナトリウム(Na)濃度が135mEq/L未満の状態を低Na血症という.
▼病態
血漿Na濃度と体内の総陽イオン量,体水分量には以下の関係がある.
●血漿Na濃度=交換可能な体内総陽イオン量(mEq)/体水分量(L)
体内の総陽イオン量に比較して体内自由水量が増加した状態である.腎機能ならびに間脳下垂体系のADH分泌が正常であれば,血漿浸透圧は一定の範囲に調節される.低Na血症が進行するのは,水分バランス調節機構が破綻し,自由水が過剰に体内に貯留するときであり,①水分負荷量が腎臓の水排泄能を上回っている(心因性の多飲など),②ADH分泌あるいは尿細管のADHに対する反応性が亢進している,のいずれかが認められる.痛み刺激,嘔吐,ストレスなどは生理的なADH分泌刺激因子である.生理的なADH分泌刺激がないにもかかわらずADHの分泌が亢進し,低Na血症が出現する病態が抗利尿ホルモン分泌異常症候群(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone:SIADH)である.主な原因には,肺癌などの悪性疾患,肺炎などの肺疾患,髄膜炎などの中枢神経疾患,SSRIなどの薬物がある.
低Na血症の多くは,血漿浸透圧も低下している(低浸透圧性低Na血症).一方,著しい高血糖など,Na以外の浸透圧物質が血液中に多量に存在する場合には,細胞