▼定義
血清K濃度3.5mEq/L未満を低K血症という.
▼病態
通常,血清K濃度が3mEq/L以下になるまで症状は認められない.脱力感は血清K濃度が2.5mEq/L以下となると出現し始める.重度の低K血症では,けいれん,横紋筋融解症,呼吸筋麻痺,イレウスなども合併することもある.
低K血症は①Kの摂取不足,②細胞内へのKの移動,③腎からの喪失,④腎以外からの喪失,のいずれかによって起こる.
▼診断
図9-17図のような流れで診断する.
➊偽性低K血症と細胞内へのKシフトを促す状況の除外
白血病などにおける増殖の盛んな白血球芽球の増加では,採血後に室温で放置することにより,細胞へのKの取り込みが起こり,低K血症となり,これを偽性低K血症という.
細胞内へのKシフトを促す状況とは,インスリン投与(高カロリー輸液による内因性インスリン分泌でも起こる),β2刺激薬投与,アルカローシス,甲状腺機能亢進症による周期性四肢麻痺などである.
➋腎臓からの喪失か,腎臓以外からの喪失か
尿中K排泄<20mEq/日またはスポット尿のK<13mEq/gCrであれば腎外性,尿中K排泄K>20mEq/日またはスポット尿のK>13mEq/gCrならば腎性の喪失が考えられる.
腎外性喪失の場合は,K摂取不足なのか消化管からのK喪失なのかを判断する.消化管からのK喪失の場合,嘔吐であれば,代謝性アルカローシスを伴う.下部消化管からのK喪失では,代謝性アシドーシスを伴う.特に,摂食障害で,隠れて嘔吐している場合や,下剤を乱用しているようなケースに注意する.
➌腎性K喪失の場合
正常ないし低血圧の場合は,血液ガス分析を行い,代謝性アシドーシスなら,尿細管性アシドーシス,糖尿病性ケトアシドーシスを考え,代謝性アルカローシスなら,ループ利尿薬内服,サイアザイド利尿薬内服,Bartter(バーター)症候群,Gitelman
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