学びのポイント
●アニオンギャップ(AG)の測定で高AG性代謝性アシドーシス,正AG性代謝性アシドーシスに分けて鑑別を行う.
●多くの代謝性アシドーシスは基礎疾患の治療で十分であるが,アシドーシスの程度が強く全身性の影響が無視できない場合にはアルカリ投与が考慮される.
▼定義
血液中のHCO3-濃度の低下によって引き起こされるアシドーシス.代償性の過換気によりPCO2が低下する.
▼病態
代謝性アシドーシスは以下のいくつかの原因により生じる.
●体内で標準的に産生される代謝性の酸を腎臓から排泄できない.
●体内で過剰な量の代謝性の酸が産生される.
●酸の摂取または投与により体内に代謝性の酸が付加される.
●腎臓または消化管から塩基(HCO3-)を喪失する.
▼分類
アニオンギャップ(anion gap:AG)を計算し,AGが増加する高AG性代謝性アシドーシスと正常範囲内の正AG性代謝性アシドーシスに分類される(図9-18図).
高AG性代謝性アシドーシスの主な原因は酸産生の増大による有機酸の蓄積である.正AG性代謝性アシドーシスではHCO3-の喪失に伴い血漿中のCl-が増加するためAGに変化を認めない.
▼診断(表9-7図)
➊正AG性代謝性アシドーシス
1)下痢
重度の下痢は,代謝性アシドーシスの原因として最も頻度が高い.HCO3-を多く含む腸液の喪失による正AG性代謝性アシドーシスを生じる.
2)尿細管性アシドーシス
尿細管でのHCO3-の再吸収の障害で尿中にHCO3-を喪失する近位尿細管性アシドーシス,尿細管でのH+分泌の障害により引き起こされる遠位尿細管性アシドーシスに分けられる.原因として遺伝性に発生する一次性尿細管性アシドーシス,薬剤性やSjögren(シェーグレン)症候群などの自己免疫疾患に続発して発生する二次性尿細管性アシドーシスがある.尿細管性アシドーシスでは尿中にカリウムを喪失