学びのポイント
●呼吸性アシドーシスは低換気によるPCO2上昇,呼吸性アルカローシスは過換気によるPCO2低下が主病態である.
●治療は原疾患に対する介入を行うことが基本.
▼定義
肺の低換気(hypoventilation)によって細胞外液のPCO2が上昇する病態を呼吸性アシドーシス,過換気(hyperventilation)によって細胞外液のPCO2が低下する病態を呼吸性アルカローシスと定義する.
▼病態
➊呼吸性アシドーシス
末梢で産生されたCO2はH2Oと結合しH2CO3を経てH+とHCO3-となる.H+は赤血球中のヘモグロビンや細胞内蛋白により緩衝される.
●CO2+H2O→H2CO3→H++HCO3-
末梢で産生され赤血球により肺に運ばれたCO2を排泄できない病態で呼吸性アシドーシスが起こる.延髄の呼吸中枢の抑制,呼吸筋の障害,換気障害,ガス交換の異常がその原因となる(表9-9図).呼吸性アシドーシスの代償反応で腎臓によるHCO3-の産生が起こる.
➋呼吸性アルカローシス
末梢で産生されたCO2を排泄するのに必要な換気量以上の換気(過換気)により呼吸性アルカローシスが起こる.過呼吸は呼吸中枢の直接的な刺激,低酸素血症(末梢の化学受容器の刺激)が原因となる(表9-10図).
呼吸性アルカローシスは腎臓によるH+排泄低下,HCO3-再吸収低下(排泄増加)により代償されるが,呼吸性アシドーシスの場合と同様に腎臓による代償反応が機能するまでには数時間~数日を要する.
▼分類
▼治療
➊呼吸性アシドーシス
原因疾患に対する治療を行う.意識障害を伴う場合,pHが7.1以下の場合,PCO2が80mmHg以上で重症の呼吸性アシドーシスの場合には人工呼吸管理を含めた呼吸管理を行う.アルカリ化剤の投与はHCO3-の代謝により新たなCO2を産生しアシドーシスを悪化させる可能