診療支援
治療

2 低カルシウム血症
hypocalcemia
濱野 高行
(名古屋市立大学大学院教授・腎臓内科学)

疾患を疑うポイント

●しびれ,骨痛,不整脈,QTの延長,Chvostek(クヴォステク)徴候,Trousseau(トルソー)徴候などの症状があるとき.

●テタニー,けいれん,低血圧などがあれば急性の低Ca血症を疑う.骨軟化症やくる病,基底核の石灰化,錐体外路障害,白内障などでは,慢性の低Ca血症が原因のこともある.

学びのポイント

●低Ca血症では心電図上QT延長を認めるだけでなく,重度のものは致死的な不整脈,心機能の低下,低血圧の原因となり,生命にかかわる.

●低Ca血症の原因特定が,長期的な治療上重要である.

▼定義

 血清イオン化カルシウム(Ca)濃度の異常低値.日常臨床では,イオン化Ca濃度を計測することはまれなので,補正Ca濃度でイオン化Ca濃度を推測する〔本章「高カルシウム血症」の項()を参照〕.

▼病態

 副甲状腺機能低下症がなければ,低Ca血症のときに血清Ca濃度を正常化させるようにPTH分泌が障害されるとともにPTH抵抗性が上昇するが,低マグネシウム(Mg)血症が併存するとPTH抵抗性が惹起され治療抵抗性となる.主な臨床症状は,細胞膜電位の異常が神経筋の易興奮性をもたらすことによる.

▼疫学

 輸血,腎不全,吸収不良症候群(下痢も含む),副甲状腺摘出後,高リン血症によるものが多い.敗血症や急性膵炎でも起こる.最近,デノスマブやカルシミメティクスによる薬剤性のものも増加してきている.副甲状腺機能低下症によるもの,Fanconi(ファンコーニ)症候群などはまれである.

▼診断

 血清Ca濃度の測定.

▼分類(鑑別診断)

 急性のものに関しては,大量の輸血製剤の使用・血漿交換(クエン酸塩投与),副甲状腺摘出後のhungry bone,横紋筋融解,急性膵炎などがある.

 慢性的なものに関しては,まず腎不全がないかを先に評価する(図9-21).腎不全がなく,尿中Ca排泄が多ければ,腎臓での

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