疾患を疑うポイント
●CKDステージG3から認められるようになり,腎機能低下とともに進展する.
●透析患者ではほぼ必発.
●感染症,悪性腫瘍,炎症などが併存すると悪化しやすい.
学びのポイント
●CKDの代表的合併症の1つであるが,慢性的な虚血により臓器障害の進展が助長されるため,腎機能のさらなる悪化や心血管系合併症につながる.
●腎機能低下に伴って貧血の頻度および程度は重症化する.
●適切な貧血治療によりQOLを改善させるだけでなく,心血管系合併症の防止が期待できる.
▼定義
腎臓においてヘモグロビンの低下に見合った十分量のエリスロポエチン(erythropoietin:EPO)が産生されないことによって引き起こされる貧血であり,貧血の主因が腎障害以外に求められないものをいう.
▼病態
赤血球造血を促進するEPOは,腎尿細管間質に存在する線維芽細胞様細胞から産生されるため,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の進行に伴ってその産生が低下する.したがって,CKDと腎性貧血は関連しており,糸球体ろ過量の低下に伴って貧血の頻度と程度は進行する.通常,CKDステージG3から腎性貧血が認められるようになるが,原疾患が糖尿病の場合には顕著となりやすい.
腎性貧血の主因はEPOの相対的/絶対的不足であるが,尿毒症物質の蓄積による赤血球寿命の短縮・EPOに対する造血反応(EPO反応性)の低下・栄養障害・慢性炎症・失血なども関与している.EPO反応性が低下する要因として,尿毒素物質の蓄積や体内鉄の不足が挙げられるほか,貯蔵鉄の利用効率を低下させる炎症や悪性腫瘍の存在などが問題となる.
長期間の貧血は慢性的な虚血状態が持続していることとなるため,諸臓器に悪影響をもたらす.エネルギー消費量の多い腎尿細管細胞では,アポトーシスなどが誘発されるため,腎機能障害の増悪を招く.また,心不
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