診療支援
治療

1 微小変化群
minimal change disease
和田 健彦
(東海大学准教授・腎内分泌代謝内科学)

疾患を疑うポイント

●典型的には急激に発症する浮腫で気づかれることが多く,若年者に発症した場合は本症の頻度が高い.

●高度な蛋白尿・低アルブミン血症をきたし,浮腫は眼瞼周囲などの低圧部位で特に顕著となる.

▼定義

 微小変化群は一次性ネフローゼ症候群の主要な原疾患の1つであり,病理組織学的には光学顕微鏡で明らかな変化を呈さず,電子顕微鏡で観察される糸球体足細胞の足突起の消失・平坦化が唯一の異常所見である.

▼病態

 糸球体の蛋白透過性亢進の機序として,T細胞の機能異常が想定されている.この理由として,本症候群が気管支喘息やアトピー性皮膚炎を有する患者に多くみられ,IgEが関与するⅠ型アレルギーとの関連性が指摘されていることや,細胞性免疫を変化させる糖質コルチコイドや免疫抑制薬が奏効することが挙げられる.また,Hodgkin(ホジキン)リンパ腫患者では健常者に比べて発症率が高いこともこの説を支持している.近年では抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブが本症の再発抑制に有効であることが示されており,少なくとも再発の機序にB細胞が関与している可能性も提唱されている.

 本症の多くは一次性に発症するが,ウイルス感染症や薬剤,Hodgkinリンパ腫などの悪性疾患,アレルギーに続発して二次性の発症様式をとるものもある.

▼疫学

 日本腎生検レジストリーのデータによると,全年齢層では一次性ネフローゼ症候群症例の約40%を本症が占めて最多であるのみならず,未成年層では80%弱であり,一次性ネフローゼ症候群の大多数を占めている.

 一方,高齢者ネフローゼ症候群患者の原疾患としては20%程度を占めるにすぎないが,ステロイド薬の副作用など,臨床的には重要な課題を内包していることには注意が必要である.

▼診断

 成人ネフローゼ症候群の診断には,1日3.5g以上(または随時尿で3.5g/gCr以上)の蛋白尿と血清ア

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