診療支援
治療

2 腎血管性高血圧症
renovascular hypertension
長田 太助
(自治医科大学教授・腎臓内科学)

学びのポイント

●腹部血管雑音などの身体所見,レニン-アンジオテンシン系活性化の有無,画像などでの腎血管狭窄部位の把握,が重要.

●両側腎動脈狭窄は,腎機能低下によるうっ血の影響で血圧は上昇するがレニン活性は上昇しない.

●原因疾患が,粥状動脈硬化なのか,線維筋性異形成もしくは高安動脈炎によるものなのか,問診,既往歴などからもある程度推定できる.

▼定義

 主として腎動脈の狭窄が原因で,腎灌流圧の低下がレニン過剰産生を亢進させて生じる高血圧症のことである.全高血圧患者の約1%を占めるといわれ,割合発症頻度が高い.

▼病態

 高血圧の成因は,①狭窄腎からのレニン過剰産生を契機とするレニン-アンジオテンシン系の亢進,②狭窄による腎障害(特に両側腎狭窄の場合)である.

 粥状硬化症(動脈硬化性腎動脈狭窄症)は,動脈硬化を基盤とし,50歳以上の男性に多い.線維筋性異形成は主に40歳未満の比較的若い女性にみられる.高安動脈炎(大動脈炎症候群)も40歳未満の比較的若い女性に多い.その他の腎動脈の病変としては,動脈瘤,血栓・塞栓,動静脈瘻,先天性狭窄などがある.

 また両側性狭窄がある場合,虚血による腎障害が代償できないため,臨床的に腎不全に陥る.これは虚血性腎症とよばれる.

▼診断

 高血圧の病歴が短い,あるいは急速な増悪(特に高齢者で),腹部血管雑音,腎臓の大きさの左右差,ACE阻害薬やARBを使用後の血清Cr値の上昇を認める場合などに,積極的に疑う.身体所見としては腹部血管雑音(連続性または収縮期のみ高調雑音)が重要である.血液検査としては血漿レニン活性(PRA)高値,低カリウム血症(二次性アルドステロン症)がみられる.PRAは片側性腎動脈狭窄では上昇することが多いが,臨床経過の長い場合や両側性腎動脈狭窄では正常値をとることも多い(図9-48).分腎機能,腎血流の左右差の評価には,腎シンチグラフィ・ス

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