学びのポイント
●中型血管炎に属するPANは中型血管の壊死性血管炎と動脈瘤がみられるまれな疾患であるが,一般に糸球体腎炎はみられない.
●腎病変として時に腎梗塞や腎血管性高血圧,虚血性腎症がみられることがある.
▼定義
腎臓や腹部などの中型動脈に壊死性血管炎と動脈瘤を生じる原因不明の中型血管炎である.ANCAは陰性であり,ANCA関連血管炎と区別される.
▼病態
不明である.通常,小血管(細動脈,毛細血管,細静脈)を侵すことはなく,腎病変として糸球体腎炎はみられない.B型肝炎に続発することがあり,病態との関連が示唆されている.
▼疫学
現在はまれな疾患と考えられている.男女比は1~3:1で男性に多く,発症平均年齢は55歳程度.
▼症状・検査所見
罹患臓器の症状が現れる.腹部では虚血性腸炎・消化管穿孔,多発性単神経炎,中枢神経では脳梗塞,皮膚では紫斑や四肢末梢の壊疽などがみられる.腎病変としては,腎動脈や分岐動脈の狭窄・閉塞により,腎血管性高血圧を生じることがある.
全身の炎症所見(CRP高値,赤沈亢進)がみられるが,ANCAや特異的な自己抗体は陰性である.血尿,軽度の蛋白尿がみられることがあるが,腎炎性尿所見はみられない.腹部動脈造影検査で,血管の狭窄・閉塞や動脈瘤を認めることがある.
▼診断
診断は,厚生労働省「難治性血管炎に関する調査研究班」で作成された診断基準(2005)に従う.主要症候と組織所見,血管造影所見を組み合わせて診断する.
皮膚生検,腓腹神経生検,時に腎生検で中型動脈の壊死性血管炎を証明すると確定診断できる.
▼治療・予後
エビデンスのある治療法はない.通常,顕微鏡的多発血管炎に準じ,副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬が用いられる.皮膚病変に対しては局所治療も行われる.B型肝炎によるPANの場合は血漿交換が行われることがある.一般に予後は不良である.
▼特殊な病型
皮膚に限局す
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