▼定義
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は,抗二本鎖(ds)DNA抗体などの自己抗体を特徴とする全身性炎症性疾患である.腎臓はSLEの重要な標的臓器である〔第13章「全身性エリテマトーデス」の項(→)も参照〕.代表的な腎病変は免疫複合体の沈着により生じるループス腎炎であるが,抗リン脂質抗体症候群腎症を合併したり,頻度は少ないが二次性の血栓性微小血管症をきたしたりすることもある.
▼病態
ループス腎炎では,抗dsDNA抗体や抗ヌクレオソーム抗体とDNAやヌクレオソームの免疫複合体が,糸球体毛細血管壁やメサンギウムに沈着する.免疫複合体により補体が活性化され細胞障害が生じるとともに,好中球や単球・マクロファージなどの炎症細胞が遊走・浸潤して,活性酸素,蛋白融解酵素,サイトカイン,増殖因子などが放出され,炎症性病変が形成される.
ループス腎炎における特異的な組織所見は,免疫複合体が糸球体内皮細胞と糸球体基底膜の間に大量に沈着(内皮下沈着)して生じるワイヤーループ病変である(図9-52図).このほか,管内細胞増多,核崩壊,フィブリノイド壊死,細胞性・細胞線維性半月体などがループス腎炎の活動性病変として観察される.
SLE患者ではしばしば抗リン脂質抗体が陽性となる.抗リン脂質抗体陽性患者で腎血管系に血栓性病変を生じた場合は,抗リン脂質抗体症候群腎症とよぶ〔本章「抗リン脂質抗体症候群」の項(→)参照〕.ループス腎炎にしばしば合併する.
▼疫学
アジア系のSLE患者では診断時に20~60%,経過中に40~80%で腎病変が出現する.日本腎生検レジストリーのデータでは,ループス腎炎の男女比は1:4であり,SLE全体の1:9に比べ男性の比率がやや多い.女性は30歳代にピークがあるが,男性は年齢による差異はあまりみられない.
▼分類
ループス腎
関連リンク
- 新臨床内科学 第10版/3 全身性エリテマトーデス
- 新臨床内科学 第10版/2 抗リン脂質抗体症候群
- 治療薬マニュアル2024/タクロリムス水和物《プログラフ》
- 治療薬マニュアル2024/ミコフェノール酸 モフェチル《セルセプト》
- 治療薬マニュアル2024/アザチオプリン《アザニン イムラン》
- 臨床検査データブック 2023-2024/抗糸球体基底膜抗体〔抗GBM抗体〕 [保] 262点
- 新臨床内科学 第10版/2 急速進行性糸球体腎炎症候群
- 今日の治療指針2023年版/関節リウマチ―関節外症状の治療
- 今日の治療指針2023年版/結節性多発動脈炎
- 新臨床内科学 第10版/10 全身性アミロイドーシス
- 今日の治療指針2023年版/多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)
- 今日の小児治療指針 第17版/膜性増殖性糸球体腎炎
- 今日の治療指針2023年版/顕微鏡的多発血管炎,多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)
- 今日の治療指針2023年版/血管炎性ニューロパチー
- 新臨床内科学 第10版/3 全身性エリテマトーデス
- 今日の小児治療指針 第17版/急速進行性糸球体腎炎