診療支援
治療

1 M蛋白血症
M-proteinemia
小松田 敦
(JA秋田厚生連雄勝中央病院・内科)

疾患を疑うポイント

●中~高齢者での発症が多い.

●貧血,めまい,骨痛で見つかることもある.

学びのポイント

●M蛋白による腎障害は,M蛋白の沈着による直接的な腎障害と薬剤や高Ca血症による腎障害がある.

▼定義

 形質細胞またはB細胞の異常により過剰に産生される免疫グロブリンやその構成成分はM蛋白パラプロテインとよばれる.それらが腎臓に親和性をもち,沈着するため腎障害を呈する.

▼病態

 M蛋白の組成の違いにより,糸球体に沈着する病態,糸球体ろ過後に尿細管管腔内で円柱を形成する病態,再吸収されて尿細管基底膜に沈着する病態がある.また,多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)に伴う有害事象である高Ca血症による腎障害がある.

▼疫学

 多発性骨髄腫患者の約半数の患者で腎機能障害がみられ,腎不全は約20%に認められる.

▼分類

‍ 表9-42の通り,多彩である.近年,腎障害のなかでM蛋白が強く影響を与えている疾患をMGRS(monoclonal gammopathy of renal significance)と称している.

▼診断

 M蛋白に関連した慢性腎臓病は,M蛋白を産生する原疾患とM蛋白の沈着による臓器障害からなる.多発性骨髄腫の診断基準は,日本骨髄腫学会(編)「多発性骨髄腫の診療指針第4版」(2016)に基づいて診断する.血清,尿中のM蛋白の同定は免疫電気泳動や免疫グロブリン遊離軽鎖(free light chain:FLC)測定で行う.腎症候は蛋白尿・血尿や腎機能障害があり,蛋白尿は軽微なものから難治性ネフローゼ症候群を呈するものまである.血中・尿中のM蛋白の存在が診断に有用であるが,診断確定には腎生検が必須である.

▼治療

治療目標と原則

 MMの場合,サリドマイドやその誘導体,プロテアソーム阻害薬などで,骨髄腫細胞の増殖を強力に抑制する.

治療法

 MGRSによるMIDDや

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