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治療

3 HIV感染症に伴う腎障害
renal disease associated with human immunodeficiency virus(HIV) infection
日ノ下 文彦
(国立国際医療研究センター病院・腎臓内科診療科長)

▼病態

 HIV感染患者は,急性腎障害(acute kidney injury:AKI)に陥りやすいほか,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)を合併しやすいことが知られている.AKIの原因として有名なのは,HIV-associated nephropathy(HIVAN)であり,有効な抗レトロウイルス療法(anti-retroviral therapy:ART)が発達するまでは,腎機能が急速に悪化する危険な疾患として知られていた.一般に,HIVANは黒人に多いが,HIVANに罹患しやすい遺伝的背景として22番染色体上のapolipoprotein L1(APOL1)の遺伝子多型が関与している.遺伝的リスクが高い患者がHIV感染症に陥りコントロールされなかった場合,糸球体上皮細胞や尿細管上皮細胞にHIVが感染し傷害を誘発する.HIV遺伝子のVprNefが糸球体上皮細胞に発現すると上皮細胞が直接ダメージを受け,アンジオテンシンⅡによる傷害が惹起されたり,細胞の分化,増殖に悪影響を及ぼす.病理組織学的には,間質性腎炎を伴う虚脱性の巣状分節性糸球体硬化症の所見を示すのが特徴で,確定診断には腎生検が必須である.

 HIVAN以外のAKIとしては,HIV以外の感染症の合併(例:敗血症)やARTの治療薬による副作用がよく知られている.一般にコントロール不良のHIV感染患者は易感染性であり,敗血症に陥ると敗血症性ショック(septic shock)や多臓器不全に陥りAKIを合併しやすい.ARTで使用されるヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬のテノホビル(tenofovir:TFV)は尿細管障害を惹起することがある.実際,Fanconi症候群や腎性尿崩症を起こしたとする報告もあり,使用時には注意が必要である.

 HIV感染者はCKDも合併しやすいが,ARTに伴う慢性間質障

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