診療支援
治療

【1】糖尿病性腎症
diabetic nephropathy
廣村 桂樹
(群馬大学大学院教授・腎臓・リウマチ内科学)

疾患を疑うポイント

●5年以上の糖尿病罹患患者.

学びのポイント

●糖尿病性腎症は網膜症,神経症とともに糖尿病の微小血管障害であり,三大合併症の1つ.

●糖尿病性腎症は透析導入原因の第1位.

●微量アルブミン尿が検出される早期腎症期までに,血糖と血圧のコントロールをしっかり行うことが,腎症の進展阻止のために重要.

●レニン-アンジオテンシン系阻害薬は腎保護作用を有し,降圧療法の第一選択薬.

▼定義

 糖尿病性腎症は高血糖の持続により生じる糸球体毛細血管を中心とした微小血管障害であり,進行すると末期腎不全に至る〔第6章のも参照〕.

▼病態

 糖尿病性腎症の典型的な経過では,初期には糸球体ろ過量(glomerular filtration rate:GFR)がやや上昇し糸球体過剰ろ過となる,その後,微量アルブミン尿が出現,さらに顕性アルブミン尿(顕性蛋白尿)へと増加し,一部の患者ではネフローゼ症候群を呈する.この頃よりGFRの低下がみられ腎不全となり,末期腎不全へと進行する.

 病理学的には糸球体が病変の主座であり,初期にはGFR増加,糸球体内圧上昇(糸球体高血圧)により糸球体肥大がみられる.そして,びまん性病変とよばれる糸球体基底膜肥厚やメサンギウム拡大が出現する.さらに進行すると結節性病変〔Kimmelstiel-Wilson(キンメルスティール-ウィルソン)結節〕とよばれる,分節性にメサンギウム領域が類円形へと拡大をきたす病変に至る.びまん性病変,結節性病変は細胞外基質の増加・蓄積により生じる.また結節性病変は糖尿病性腎症に特異度が高い病変である.この他,糸球体基底膜二重化・内皮下腔開大,滲出性病変(fibrin cap,capsular drop),メサンギウム融解,輸出入細動脈の硝子化も糖尿病性腎症に特徴的な組織像であるが,糖尿病性腎症以外の腎障害でもみられることがある.

▼疫学

 わが国の

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