▼定義
高尿酸血症による腎障害は,白血病などの治療の際に大量の細胞破壊などによる急激な尿酸の産生増加により腎からの尿酸排泄量が増加し,尿酸が尿細管腔の閉塞を起こし,時に腎不全に陥ることもある尿酸性腎症(uric acid nephropathy)と,高尿酸血症が長期間持続して尿酸塩結晶が尿細管および間質に析出・沈着することにより起こる尿酸塩性腎症(urate nephropathy)とに分類される.痛風腎は,尿酸塩性腎症の範疇に入り,狭義では腎実質内に尿酸塩の沈着を認めた場合に定義されるが,最近では,痛風に高率に合併する高血圧,糖・脂質代謝異常などによる腎障害も含めて,原発性痛風に合併する腎障害を広義に痛風腎と定義されていることが多い.
▼病態
痛風による腎障害の発症・進展の機序は,高尿酸血症および高尿酸尿症に伴い腎髄質を中心に尿酸,尿酸塩結晶が尿細管管腔内および間質に析出することが主因の1つと考えられている.現在のところ,痛風腎はインスリン抵抗性を基盤とした高尿酸血症,高尿酸尿症,酸性尿からくる慢性間質性腎炎と高血圧,脂質代謝異常,糖代謝異常などからくる細動脈性腎硬化症の両者が複雑に関連して形成されると考えられる.最近,高尿酸血症自体が血管内皮細胞障害を介して動脈硬化をきたすことが示されてきている.また尿酸によって惹起される炎症,酸化ストレス,レニン・アンジオテンシン系亢進なども動脈硬化に関連してくる.
▼疫学
痛風の基礎疾患である高尿酸血症は経年的に増加を認めており,高尿酸血症の頻度は成人男性の20~30%に,女性では閉経前では1%前後で,閉経後では3~5%に認められている.現在,全国で高尿酸血症患者は約1,000万人,痛風患者は約100万人とされている.痛風患者の腎障害の頻度についてはさまざまな報告があるが,われわれのデータでは腎機能の低下の観点からみると約14%である.
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