診療支援
治療

【7】悪性腫瘍に伴う腎病変
kidney diseases in cancer patients
森 慶太
(京都大学大学院メディカルイノベーションセンター)
柳田 素子
(京都大学大学院教授・腎臓内科学)

疾患を疑うポイント

●悪性腫瘍を有する患者(担癌患者)は高い腎障害リスクを有していることを認識する.

●腎障害を起こしやすい薬剤,悪性腫瘍により起こりやすい腎障害をあらかじめ把握していることが重要.

学びのポイント

●近年の高齢化により悪性腫瘍患者数が増加していること,悪性腫瘍患者のCKD率が高いこと,新規抗腫瘍薬による腎障害が増加していることなどより,悪性腫瘍の治療と腎障害の関与が注目されている.

●悪性腫瘍に伴う腎障害の診断や治療については,一般的なAKI・CKDに準じるが,悪性腫瘍の種類により生じやすい腎障害や抗腫瘍薬に特徴的な腎障害があることを理解する.

●悪性腫瘍に伴う腎障害は,腎障害そのものや腎障害による治療選択の制限などにより生命予後に強く影響しうる.

▼病態

 担癌患者は,悪性腫瘍の存在そのものによる影響(代謝異常,圧迫・腎摘,尿管浸潤など)に加え,腎毒性を有する薬剤(抗腫瘍薬,NSAIDs,抗菌薬,造影剤など)を繰り返し投薬されることが多いこと,治療に伴う下痢・嘔吐や腫瘍崩壊症候群など,腎障害を生じるリスクがきわめて高い.さらに,原因も複合的であることが多く,治療に難渋し腎機能障害が遷延・悪化しやすいのも特徴である.さらに腎障害が予後や癌治療に影響することがあり,注意が必要である.病態としては,一般的な急性腎障害(acute kidney injury:AKI)・慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の分類に準じて理解することができ,以下の分類の項で詳説する.

▼疫学

 新規抗腫瘍薬などの治療の進歩による担癌患者の予後改善のため,結果的に治療を受ける担癌患者数が増加している.一方で,担癌患者には腎障害が高頻度で出現することや,腎障害による予後・治療への影響が注目されるようになっている.担癌患者の12%はCKDを有し,それ自体がAKI発症の高リスクで

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