疾患を疑うポイント
●Alport症候群は進行性の腎炎に感音性難聴および眼病変を合併するが,腎症状のみを呈する場合も多々ある.
●全例に血尿を伴うため,家族性血尿で中等度以上の蛋白尿または家系内に腎不全患者を有する場合はAlport症候群を,血尿のみの場合は基底膜菲薄化症候群を疑う.ただし孤発例も存在する.
▼定義・疫学
Alport(アルポート)症候群は進行性の腎炎,感音性難聴および眼病変を特徴とする.一方,基底膜菲薄化症候群(TBM)は本来病理診断名であるが,血尿(および軽度蛋白尿)に加え,病理学的に腎糸球体基底膜の菲薄化を認め,ほかの腎疾患が否定的である場合に臨床診断名で用いられる.
有病率は約5,000人に1人とされ,成人の新規腎不全患者の0.3~2.3%を占めるとされている.
▼病態
糸球体基底膜を構成するⅣ型コラーゲンα3/α4/α5鎖をコードする遺伝子である,COL4A3/COL4A4/COL4A5の異常によって発症する.Ⅳ型コラーゲンにはα1~α6の6種類のα鎖が存在し,それらが,α1-1-2,α3-4-5またはα5-5-6などの三量体を形成している.このα鎖の組み合わせは臓器特異的であり,腎糸球体基底膜および蝸牛基底膜,眼球レンズ基底膜はα3-4-5で,Bowman囊および皮膚基底膜はα5-5-6で構成されている.Alport症候群においては遺伝子変異に伴いα3/4/5鎖に異常が生じるため,これらによる三量体を構成できなくなる.それにより腎病変,感音性難聴,眼病変を引き起こす.
▼分類
Alport症候群はその遺伝形式によって,X染色体連鎖型(X-linked Alport syndrome:XLAS),常染色体劣性(autosomal recessive Alport syndrome:ARAS),常染色体優性(autosomal dominant Alport
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