診療支援
治療

3 膀胱炎
cystitis
荒川 創一
(三田市民病院・院長)

疾患を疑うポイント

●排尿終末時痛,頻尿,下腹部痛などの膀胱炎症状で発症する.発熱はない.

●尿路に基礎疾患がない急性単純性膀胱炎は女性に起こる疾患で,性的活動期の女性と閉経以後の高齢女性とに2つのピークがある.

●神経因性膀胱,前立腺肥大症などの尿路基礎疾患を背景として起こってくる複雑性膀胱炎は,男女ともにみられ,高齢者に多い.一方で,小児で先天奇形を背景として生じるものもある.

学びのポイント

●性的活動期(10歳代後半から閉経期まで)の女性における急性単純性膀胱炎は,尿路感染症のなかでも最も頻度が高い.

●女性では,腸内細菌(特に大腸菌)が腟内に定着し,膀胱に高頻度に侵入する.通常は排尿という自然かつ生理的な菌wash out機構で菌を排除しているが,性交渉や過度の尿意我慢などを契機に内因性感染が成立した場合,膀胱炎を発症する.

●中間尿(排尿時中間部分の尿を採取し,初尿や終末時尿で起こりやすい外陰部での汚染を避け,膀胱内の尿を確実に反映する)での検尿が基本であるが,必要時には外尿道口からカテーテルを挿入し,膀胱尿を採取,鏡検する.

▼定義

 腸管内に常在している細菌が逆行性に外尿道口から尿路に侵入し膀胱内で増殖,炎症を起こし,排尿終末時痛,頻尿,尿意切迫感,下腹部痛などの膀胱炎症状を自覚する.原因菌は,急性単純性膀胱炎では大腸菌が70~80%を占め,本章「急性腎盂腎炎,慢性腎盂腎炎」の項()で示した急性単純性腎盂腎炎のそれと同様の分布である.

▼診断

 膀胱炎症状と膿尿・細菌尿との併存で診断される.膿尿・細菌尿の基準については本章「急性腎盂腎炎,慢性腎盂腎炎」の項()と同様である.近年,腎盂腎炎・膀胱炎とも,原因大腸菌においてキノロン耐性,基質(特異性)拡張型βラクタマーゼ(extended-spectrum beta-lactamase:ESBL)産生菌の増加がみられており,抗菌薬

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