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治療

3 ウィルムス腫瘍
Wilms tumor
中川 徹
(帝京大学教授・泌尿器科学)

▼定義

 胎生5週頃に出現する後腎芽組織から発生する悪性腫瘍.腎芽腫(nephroblastoma)ともよばれる.

▼病態

 小児にみられる腎腫瘍の大部分を占める.腹部腫瘤や肉眼的血尿を主訴に発見される.停留精巣・尿道下裂などの泌尿器系先天異常をはじめ,種々の奇形を合併することが多い.約10%の症例はWAGR症候群(Wilms腫瘍,無虹彩症,外性器異常,知的障害),Denys-Drash(デニス-ドラッシュ)症候群(Wilms腫瘍,性分化異常,腎疾患),Beckwith-Wiedemann(ベックウィズ-ヴィーデマン)症候群(Wilms腫瘍,臍ヘルニア,巨舌,過成長)などの多発奇形症候群に伴う.WT1遺伝子(11p13),WT2遺伝子(11p5),WTX遺伝子(X染色体)などの異常が発症に関与する.

▼疫学

 わが国では,全小児悪性腫瘍の約5%を占める.年間80~100例が発症し,出生数1.2万~1.5万人に1人とされる.女児にやや多い.好発年齢は1~4歳で,80%の症例が5歳以下に発症する.まれに成人発生例もある.

▼分類

 診断時に腎摘除術あるいは生検を行い,組織型と病期を決定する.病理学的に予後良好群と,退形成性腎芽腫などの予後不良群に分類する.

▼診断

 古典的三徴である腹部腫瘤触知,肉眼的血尿,腹痛を契機に発見される例が多い.なかでも腹部腫瘤の触知が最多である.

 特異的な血液・尿マーカーは存在しない.超音波検査,CTを実施し,腎原発であることの確認,局所での進展・特に下大静脈への進展の有無,対側腎腫瘍の有無,遠隔転移などを評価する.遠隔転移部位は肺が最多である.

▼治療

 外科的切除,化学療法,放射線照射よりなる集学的治療を行う.まず手術を行い,摘出検体の病理組織型と,病期(ステージ)に応じて化学療法や放射線照射を行う.化学療法ではアクチノマイシンD,ビンクリスチン,ドキソルビシンな

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