診療支援
治療

くも膜下出血
subarachnoid hemorrhage(SAH)
鈴木 秀謙
(三重大学大学院教授・脳神経外科学)

疾患を疑うポイント

●頭痛の診療の際は常に念頭におく.

●SAH後に遅発性の神経症状悪化をみた場合,4~14日目頃なら脳血管れん縮などによるDCI,2~6週頃ならNPHを疑う.

学びのポイント

●SAH診療の際は脳動脈瘤破裂をまず疑う.

●前兆(警告頭痛や椎骨動脈解離時の後頭部痛など)を理解する.

▼定義

 くも膜下腔に出血した状態を示す.

▼病態

 脳動脈瘤(囊状,解離性,感染性,外傷性,腫瘍性),脳動静脈奇形,もやもや病,硬膜動静脈瘻,頭部外傷,脳内出血からの進展,出血性素因,抗凝固療法,脳血管炎,ヘルペス脳炎,脳静脈・硬膜静脈洞血栓症,原発性・転移性脳腫瘍,脊髄病変,アルコール乱用やコカインなどの薬物などが原因となる.

▼疫学

 特発性(非外傷性)くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)の原因の約80~90%は(囊状)脳動脈瘤破裂である.

▼診断

症状

 典型的には金槌で殴られたような突然の激しい頭痛や嘔吐で発症する.非典型的な症状の軽症例もある.意識障害は一過性のことが多いが,重症例では昏睡や心肺停止状態で救急搬送される.時にけいれんを伴う.発症数時間後より髄膜刺激症状(項部硬直など)を認める.重症例では硝子体出血〔Terson(テルソン)症候群〕を伴うことがある.

頭部CT scan

 単純CTは第一選択の検査で,くも膜下腔の高吸収で診断するが,軽症例(出血量が少量)や発症後数日以上経過した症例では高吸収が不明瞭となり診断困難である(図10-6).単純CTが一見正常でも,臨床的にSAHが否定できない場合,単純CTに続いて3D-CT angiography(CTA)で脳動脈瘤などの血管性病変,造影CTでその他の疾患を探索する.

頭部MRI

 FLAIR画像は,CTで診断困難な少量の出血や血腫吸収期(亜急性期)のSAHでも,くも膜下腔の高信号として容易に診断可能であ

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