診療支援
治療

(1)ESUS
embolic stroke of undetermined source
八木田 佳樹
(川崎医科大学教授・脳卒中医学)

疾患を疑うポイント

●脳梗塞のうち,原因不明なものがESUS.

●除外診断であり,疑うことから診断に至る性格のものではない.むしろ原因疾患を特定するための検査をおろそかにすることで,過剰にESUSという診断を下すことがないように注意を要する.

学びのポイント

●脳梗塞全体の25%程度が原因不明とされ,その多くを占めるといわれている.

●脳梗塞再発予防のための抗血栓療法は,原因によりその方針が異なるため,病型診断が重要である.ESUSでは最適な抗血栓療法を選択できないため,他病型より再発が多い.

●ESUSでは抗血小板療法が選択されることが多く,抗凝固療法の導入には追加検査や長期の観察によりその根拠を得ることが必要.

●悪性腫瘍関連のものは予後不良であり,梗塞巣が多血管支配領域にわたるものや,入院時Dダイマー高値の例では悪性腫瘍の検索が必要.

▼定義

 塞栓源不明の脳塞栓症のこと.2014年,Cryptogenic Stroke/ESUS International Working Groupにより提唱された概念で,診断基準を定めることで「原因不明脳梗塞」診断の標準化を目指したものである.

▼病態

 脳梗塞は原因と責任血管により主要3病型とその他の脳梗塞に分類される(図10-21).その他の脳梗塞のうち十分な検査によっても原因不明なものについては,従来から潜因性脳卒中(cryptogenic stroke)という用語が用いられていた.しかし「十分な検査」の定義はなく,どの程度原因を精査するかにより診断が変わってくる.原因不明の脳梗塞のほとんどは塞栓源不明の脳塞栓症であるという前提で,診断基準,塞栓源検索のために必要な検査を規定することで診断を標準化しようとしたのがESUSの概念である.ESUSの原疾患として想定されるものとしては,発作性心房細動,悪性腫瘍など脳梗塞発症時未診断であるものや,灌流動

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