診療支援
治療

1 髄膜腫
meningioma
齊藤 延人
(東京大学教授・脳神経外科)

▼定義

‍ 髄膜皮細胞(meningothelial cell)から発生し,硬膜や大脳鎌,小脳テントなどに付着する脳腫瘍である.ほとんどのものが良性であり発育は緩徐である.

▼病態

 脳実質外から脳を圧排して,運動麻痺や視力視野障害,脳神経麻痺など腫瘍の部位によりさまざまな神経局在症状を呈する.運動野近傍ではけいれん発作もみられる.

 発育が緩徐なため腫瘍がよほど大きくならないと頭蓋内圧亢進症状を呈することはないが,閉塞性水頭症のために二次的に頭蓋内圧が上昇することもある.頭痛の精査や脳ドックなど脳の画像検査で偶然に発見されることも多い.

▼疫学

 脳腫瘍全国集計によると,発生頻度は原発性脳腫瘍の26%を占め,40~70歳代に多く,女性に約2~3倍多い.髄膜腫の家族歴,放射線被曝は髄膜腫罹患のリスクファクターとなる.

▼分類

 WHO分類では,病理組織学的所見と悪性度によりgradeⅠ(低異型度髄膜腫),gradeⅡ(中間異型度髄膜腫),gradeⅢ(高異型度髄膜腫)に分類される.異型度が高いほど増殖が速く,再発率が高い(その下に15の亜型がある).

 発生部位による分類では局在症状とも関連する.円蓋部,大脳鎌部,傍矢状静脈洞部,蝶形骨縁部,テント部,傍鞍部,小脳橋角部などに発生する.

▼診断

頭部CTとMRI

 CTでは等~高吸収域で,境界明瞭な硬膜面に広く接する腫瘤を示す.造影剤で均一に強く造影される.腫瘍内の囊胞形成や石灰化,付着部の骨肥厚がみられることがある.

 MRIのT1強調画像では等~軽度高信号,T2強調画像では等~高信号である.脳実質外腫瘍であり,腫瘍と脳の間には,軟膜血管を示す点状無信号域や髄液を示すT2高信号の裂隙などがみられる.造影剤で強く均一に増強され,腫瘍に接した線状の増強効果(dural tail sign)が特徴的である(図10-35)

脳血管撮影

 髄膜腫は主に外

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