疾患を疑うポイント
●数週間程度で進行する亜急性髄膜炎を呈する.
●HIV感染や免疫抑制状態などが基礎疾患だが,クリプトコックス髄膜炎は健常人にも発症する.
学びのポイント
●亜急性髄膜炎の鑑別疾患は真菌性髄膜炎,結核性髄膜炎および癌性髄膜症であり,それらを念頭において診療する一方,基礎疾患の検索も重要.
●近年,発症リスクのある免疫不全状態の患者は増加しており,リスクをもつ患者を扱う広い領域の医師が熟知しておくべき疾患.
●真菌性髄膜炎で最も頻度が高いのは,クリプトコックス髄膜炎.
▼定義
HIV感染症,ステロイドや免疫抑制薬の使用,担癌状態,臓器移植後,自己免疫疾患など免疫抑制状態における神経真菌感染症である.
▼病態
亜急性髄膜炎の病型をとる一方,膿瘍形成や近接臓器からの浸潤,播種性真菌感染症の一環として中枢神経感染を伴う場合もある(表10-17図).
▼疫学
主に上記のようなリスクをもつ患者に発症し,クリプトコックス髄膜炎が真菌性髄膜炎としては最も頻度が高い.
▼診断
臨床症状として,数週間で進行・増悪する髄膜炎の症候(発熱,頭痛,髄膜刺激徴候)で本症を疑う.しかし,全身倦怠感や食欲不振など非典型的な症候や,進行性の認知障害や意識障害が前景となりうる.また,膿瘍形成に伴い神経巣症状で発症する場合もある.
脳脊髄液検査では髄液圧上昇,単核球優位の細胞数増多,蛋白上昇,糖低下がみられるが,異常が目立たない場合もある.培養検査も行われるが,診断の迅速性に欠ける.
血清・髄液の抗原検査は迅速で感度・特異度が高く非常に有用である.
頭部MRI検査では,造影剤による髄膜の増強効果がみられる場合がある.また,膿瘍形成などの所見が得られる場合もある.
▼分類
➊クリプトコックス髄膜炎
酵母様のクリプトコックス属真菌による感染症であり,本邦ではCryptococcus neoformansによるものが最多
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