▼定義
神経病理学的な疾患概念であり,嗜銀顆粒が多数みられ,Alzheimer(アルツハイマー)病(Alzheimer's disease:AD)が否定された病態である.嗜銀性顆粒の組成はリン酸化タウであり,アイソフォームは4リピートタウである.
▼病態
病理学的にAGDと病理診断された症例の臨床症状は,病理学的病変分布に一致する.すなわち記銘力障害,興奮,易怒性,情緒不安,妄想などがみられるが,特徴的所見はない.日常生活は比較的保たれる.画像上は左右差を伴う迂回回を中心とする側頭葉内側面前方の萎縮を認める.なお,病理学的にAGDと診断されても,臨床上は認知症状を呈さない症例もみられる.
▼疫学
病理学的検討を経たのち確定診断されるため評価が困難である.高齢になるに従い,有病率は増加する.AGDの頻度は変性性認知症の4番目,認知症の5~9%とされる.
▼分類
Saitoによる病理学的ステージ分類がある.①迂回回ステージ:迂回回周囲,扁桃体移行部に限局.②側頭葉ステージ:側頭葉内側面を前後方に進展.風船様神経細胞(ballooned neuron)やリン酸化タウ陽性の顆粒も目立つ.③前頭葉ステージ:前脳基底部から前帯状回,中隔核,側坐核や視床下部に病変が拡大.迂回回ではグリオーシスとニューロンの空胞変性が認められる.臨床上は③の状態となるとなんらかの認知症症状を示す.
▼診断
確定診断は病理診断のため,臨床診断は除外診断となる.緩徐進行性認知症で記銘力障害,性格変化,行動変化以外の症状に乏しく,AD,Lewy(レヴィ)小体型認知症,血管性認知症が除外される場合に本疾患を考慮する.
▼治療・予後
有効な治療法はない.臨床診断が困難なため一般的な認知症に対する治療が現状では行われている.予後は病理報告からは4~8年といわれるが,他疾患(全身性,局所性を問わず)の関与もあるため,不明である.
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