診療支援
治療

(3)原発性進行性失語症
primary progressive aphasia(PPA)
長谷川 一子
(NHO相模原病院脳神経内科/研究センター難病研究室室長)

▼定義

 認知症の病初期に(発症後2年以内),失語が主症状である場合を原発性進行性失語症(primary progressive aphasia:PPA)と称し,3病型がある.発話失行失文法を主体とする非流暢型失語症(non-fluent/agrammatic type,progressive non-fluent aphasia:PNFA),意味記憶障害による流暢性の理解・呼称障害を主徴とする意味性認知症(semantic dementia:SD),ロゴペニック型原発性失語症(logopenic aphagia:LGA)に分類される.背景病理としては,PNFAはFTD-tau,SDはFTLD-TDP,LGAはADが多い.

 PNFAは,非流暢性の表出性言語障害を中核症状とし,病初期から全病期を通じてみられる失構音(発語失行)が特徴である.

 SDは物品呼称の障害と単語理解の障害を中核症状とし,次第に意味記憶障害に進展する.意味記憶とは体験記憶と異なり,概念的知識としての記憶を指す.語の音韻が残り概念が失われるため,理解を伴わない書き取りや復唱は可能であるが,対象物の知識が障害される.意味記憶障害のため,日常生活に困難をきたす.

▼病態

PNFA

 失構音とは,構音の歪みと音韻の連結不良がめだつ発語障害を指し,構音障害とは異なる.失構音の局在は左中心前回であり,この徴候を有する場合は左中心前回が障害されていることを意味している.一般的に,PNFAでは左側の弁蓋部から上側頭回優位に病変が認められるが,病期の進行に従い,中心前回にとどまらずに中~下前回にも病変が及び,単語想起障害が出現する.さらに進行すると,単語理解障害や前頭葉症候が顕在化する.

SD

 名詞の想起と理解の障害を初発症状とし,意味記憶の障害へと進展する.当初,発語は流暢で復唱は保たれるが,単語理解,呼称障害がある.意味記

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