診療支援
治療

1 アルツハイマー型認知症
Alzheimer's disease(AD) dementia
東海林 幹夫
(老年病研究所認知症研究センター・センター長)

疾患を疑うポイント

●患者と家族による明らかなもの忘れの訴え.

●それまでできていた社会生活,日常生活,セルフケアが徐々に障害される.

●意識障害や麻痺などの神経症状はめだたない.

●認知機能検査で明らかな低下.

●MRIで側頭葉内側面・頭頂葉の萎縮とバイオマーカーの変化.

学びのポイント

●認知症患者の約50%を占める.

●Aβ,リン酸化tauの蓄積が原因である.

●エピソード記憶からはじまる学習と記憶障害,複雑性注意,遂行機能・判断力の低下,視空間機能障害,失語,人格・行動変化.

●バイオマーカーでは,脳脊髄液(CSF)Aβ42の低下,アミロイドPET陽性,CSFリン酸化tau増加,tau PET陽性,MRIによる大脳萎縮,FDG-PETにおける糖代謝低下,CSF総tau増加の変化がみられる.

●家族・介護者に負担となるBPSDを理解.

▼定義

‍ アミロイド蓄積(Aβ amyloidosis)神経原線維変化(タウオパチー)を特徴とするAlzheimer(アルツハイマー)病(Alzheimer's disease:AD)によって大脳皮質,海馬,前脳底部で神経細胞死,シナプス減少,アセチルコリン低下が起こり,認知症(dementia)となった段階をAD dementiaという.

▼病態

 アミロイドはアミロイドβ蛋白(amyloid β-protein:Aβ)から構成され,細線維として脳に沈着している.神経原線維変化は微小管結合蛋白であるtauが過剰にリン酸化される過程で不溶化し,神経細胞に蓄積する(図10-53).優性遺伝性ADでは浸透率が100%で,Aβ前駆体蛋白(amyloid precursor protein:APP),Aβ切断酵素であるプレセニリン-1やプレセニリン-2(PSEN1/2)に多数の遺伝子変異が認められる.いずれの変異もAβ42増加を起こす.孤発例ADでは輸送・代謝の低下に

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