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治療

(2)慢性硬膜下血腫による認知症
大谷 良
(国立病院機構京都医療センター・脳神経内科診療科長)

疾患を疑うポイント

●高齢者で頭部打撲歴があり,頭部打撲後,2週間ほどしてから,認知機能低下があれば疑うべき.

▼定義

 軽微な外傷を契機に,頭部被膜に覆われた流動性の血腫が硬膜下に貯留し,約2週間ほどかけて進行し,認知機能低下をきたした病態.

▼病態

 亜急性または慢性に発症する認知機能障害,歩行障害,頭痛などの頭蓋内圧亢進症状,筋力低下(片側が多い)などを示す.認知機能障害は精神活動の遅鈍や記銘力障害が主体で,認知機能障害以外の症状が目立たない例もある.10~20%の症例で急性の意識障害がみられ,こうした急性増悪例では,しばしば血腫内に新たな出血がみられる.症状をきたす臨界血腫量は40~60歳で約95mL,60歳以上で約120mLといわれている.

▼疫学

 有病率にはさまざまな報告があるが,1.71人/10万人/年とされ,高齢の男性に多い(男女比3~6:1)とされる.

▼診断

 頭部CTまたはMRIで脳表面に三日月状に広がる血腫の有無を確認する(図10-59).CTでは血腫内部の性状によって高吸収・等吸収・低吸収変化のいずれの像もありうる.等吸収変化の場合には,脳表との境界が不明瞭となるため血腫が見逃される可能性があるが,脳溝の狭小化や正中線の変異,脳室への圧排などにより診断は可能である.MRIでは,血腫内部に含有される鉄組成の変化に伴い,経時的に特徴的な信号変化を呈する.

▼治療

 画像診断で血腫の存在が証明され,なんらかの症状を有する場合はただちに外科的治療を考慮する.手術は穿頭術による血腫除去が一般的だが,難治例では硬膜下-腹腔シャント術や開頭血腫除去術も考慮される.石灰化または骨化した血腫がけいれんの原因になっている場合,開頭下に石灰化膜を除去する(図10-59)

▼予後

 一般に生命予後は良好で,外傷による脳実質への傷害がなければ,神経症状の機能予後も良好である.高齢者や,抗血栓

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