診療支援
治療

(3)脳腫瘍
大谷 良
(国立病院機構京都医療センター・脳神経内科診療科長)

疾患を疑うポイント

●認知症をきたす可能性が高いのは,神経膠腫,悪性リンパ腫,転移性脳腫瘍であり,画像診断が有用.

▼定義

 脳腫瘍による認知機能障害は,脳腫瘍自体による障害(直接の圧迫や非交通性水頭症)および病変による二次的な障害,脳腫瘍に対する治療,脳腫瘍に伴う精神的ストレスなどの因子が個別的,あるいは複合的に作用して出現する.

▼病態

 前頭葉の腫瘍では,前頭連合野の穹窿部が両側性に傷害されると自発性の欠如がみられ,両側眼野が傷害されると対側空間無視が変化する.大脳辺縁系の腫瘍では感情・気分・衝動の変化を呈する.乳頭体が傷害されると,著明な記憶力低下,作話などWernicke-Korsakoff(ウェルニッケ-コルサコフ)症候群を呈する.第三脳室内に生じたコロイド囊胞では,第三脳室壁への直接的圧迫のほか,水頭症により急激に認知症を呈することがある.また病変部位における神経伝達物質の変化や病変部位からの線維連絡を介して,腫瘍病変が直接及んでいない皮質の機能低下をきたすこともある(diaschisis).てんかん発作の合併も認知機能悪化をきたす.

 特に重症なgliomatosis cerebri,lymphomatosis cerebriに関してであるが,gliomatosis cerebriは,頭痛,けいれん,性格変化,精神症状など発生部位により多彩であるが,側頭葉や前頭連合野,大脳辺縁系などに腫瘍が浸潤すれば,高度な認知機能低下をきたす.また,lymphomatosis cerebriでは,人格変化,認知機能低下,歩行障害で発症することが多い.なお,2016年のWHO分類でこの2つの名称はなくなったが,疾患概念としては重要である.

▼疫学

 全原発性脳腫瘍の頻度は,1.5人/1万人とされる.実際に脳腫瘍を有している患者(有病率)は,131人/10万人であった.

▼分類

脳腫瘍病変によ

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