診療支援
治療

3 小舞踏病
chorea minor
古賀 道明
(山口大学大学院講師・臨床神経学)

▼定義

‍ リウマチ熱の一症候であり,Sydenham(シデナム)舞踏病やリウマチ性舞踏病ともよばれる.不随意運動として舞踏運動だけでなくチック様症状やミオクローヌスがみられることもあり,さらに強迫性障害や情緒不安定などの精神症状を伴いやすい.

▼病態

‍ A群β溶連菌(咽頭・扁桃炎)に対して血中に産生された抗体が,自己抗体として大脳基底核などの神経細胞に交差反応をすることで神経障害をきたすという,自己免疫機序が想定されている(分子相同性仮説).

▼疫学

 発症年齢は5~15歳がほぼ大部分である.男女比が1:2と女性に多いが,この傾向は10歳以下ではみられず,女性ホルモンの関与が疑われる.リウマチ熱の発症は近年激減しており,本症もまれとなっている.

▼診断

 病初期には「落ち着きがなくなった」「乱暴になった」「不器用になった」などとして気づかれることが多い.経過とともに四肢に舞踏運動が目立つようになり,顔面をしかめたり,口唇を突き出すなどの症状がみられる.筋のトーヌスは低下し四肢に筋力低下を認めることもある.

 A群β溶連菌感染を証明できれば重要な診断根拠となるため,血中の溶連菌関連抗体〔抗ストレプトリジンO(ASO),抗ストレプトキナーゼ(ASK)など〕の測定(必要に応じペア血清で)と咽頭・扁桃細菌培養を行う.しかし,感染から数か月を経過して発症することが多いため感染の証明はしばしば困難であり,鑑別疾患を根拠に診断せざるをえないことも多い.さらに,心筋炎・心内膜炎の有無は予後を左右するため,聴診・心電図・心超音波検査は必須である.脳MRIで尾状核や被殻に変化がみられることもあるが,画像検査は他疾患の鑑別目的との位置づけである.

 重要な鑑別疾患として,自己免疫性疾患(全身性エリテマトーデス,抗リン脂質抗体症候群など),代謝・内分泌疾患〔Wilson(ウィルソン)病,甲状腺機能亢進症,低カル

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