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治療

(1)MELAS,MERRF,カーンズ-セイヤー症候群,リー脳症
MELAS,MERRF,Kearns-Sayre syndrome,Leigh encephalopathy
石井 亜紀子
(筑波大学講師・神経内科学)

疾患を疑うポイント

●あらゆる年齢層に出現.

●中枢神経症状+多臓器病変の組み合わせ.

●母親の眼瞼下垂.

●最も多い組み合わせは難聴と糖尿病.

学びのポイント

●エネルギー代謝経路の理解(図10-72)

●病名=症状.

●多くのエネルギーを必要とする神経,筋,心臓などに症状が現れる.

▼定義

 ミトコンドリアの機能障害によるエネルギー産生低下に基づく種々の臨床症状を呈する疾患のうち中枢神経と骨格筋に主な病変があるものをミトコンドリア脳筋症という.

▼病態

 ミトコンドリア病の病因は,核DNA上の遺伝子変異の場合とミトコンドリアDNA(mtDNA)異常の場合がある.核DNA上の遺伝子は200以上,mtDNA上には100以上の病的点変異が同定されている.

▼疫学

 10万人に約9~16人(英国の統計).症状が多様であり,軽症で診断がつかないものは含まれておらず,実際の罹患率はより高い可能性がある.出生児200人に1人はmtDNA異常をもっており,突然変異が生じる確率は10万人に107人との報告もある.

▼分類

MELAS(ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群:mitochondrial myopathy,encephalopathy,lactic acidosis and stroke-like episodes)

 約80%が小児期(15歳以下)に発症.小児型および成人型MELASでは平均発症年齢9.0歳と32.2歳,診断時年齢11歳と33.6歳である.

 現在までに30種類以上のMELAS関連遺伝子変異が報告されており,なかでもロイシンの転移RNA(MT-TL1)遺伝子内のA3243G点変異が80%と最も多く,ついでT3271C点変異が10%を占める.

 乳児期の精神運動発育は正常であるが,徐々に低身長,瘦せ,感音性難聴,頭痛,けいれんが出現し,脳卒中様発作を反復する.脳卒中様発作

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