診療支援
治療

7 脂質代謝異常症(スフィンゴリピドーシス)
sphingolipidosis
衞藤 義勝
(脳神経疾患研究所・先端医療研究センター&遺伝病治療研究所センター長)

疾患を疑うポイント

●10種以上の疾患が含まれ,細胞内ライソゾーム酵素欠損により,肝脾腫,骨症状,中枢神経症状を呈する.発症時期も乳児期から成人期で異なる.

学びのポイント

●各種ライソゾーム酵素の遺伝的欠損で発症する.

●本症には代表的疾患として脳灰白質を障害するGaucher病,GM1またはGM2ガングリオシドーシス,Niemann-Pick病,脳白質変性をきたす異染性白質ジストロフィー,Krabbe病(グロボイド細胞白質ジストロフィー),脳血管障害,心,腎障害をきたすFabry病などがある.治療法としてけいれんなどには抗けいれん薬などの対症療法,根治治療としてGaucher病,Fabry病などでは酵素補充療法が施行されている.

▼定義

 スフィンゴリピドーシスとはライソゾーム酵素の遺伝的欠損により全身の臓器にスフィンゴ脂質の蓄積する疾患である.酵素欠損により臓器障害は異なる.

▼病態

‍ 図10-74にスフィンゴ脂質の代謝経路とその異常症を示した.各種グルコシダーゼあるいはスルファターゼの欠損により発症する.また例としてGaucher(ゴーシェ)病の病態を図10-75に示した.

‍ 図10-75に示すごとく酸性グルコシダーゼの酵素欠損により肝臓,脾臓にグルコセレブロシドが大量に蓄積する.またグルコシルスフィンゴシンも脳をはじめ全身に蓄積することにより,貧血,血小板減少,中枢神経障害,骨症状に関与することが明らかにされている.

 酵素欠損の程度により表10-41に示すごとく神経症状を呈さないタイプⅠと神経症状を呈するタイプⅡ,Ⅲに分類される.

▼疫学

 スフィンゴリピドーシスの頻度としてGaucher病はアシュケナージ系ユダヤ人では900人に1人,Tay-Sachs(テイ-サックス)病は1,200人に1人と頻度が高い.日本人の頻度はGaucher病は20万~30万人に1人,Fabry(

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