診療支援
治療

8 肢帯型筋ジストロフィー
limb-girdle muscular dystrophy(LGMD)
清水 潤
(東京工科大学医療保健学部教授・理学療法学)

▼定義

 進行性に近位筋優位に筋萎縮,筋力低下を生じる遺伝性の筋疾患.Duchenne(デュシェンヌ)型やBecker(ベッカー)型,顔面肩甲上腕型など特徴的な臨床病理像を有さない筋ジストロフィーにつけられた臨床診断名である.さまざまな臨床像や病理像を示す病型が含まれ,半数以上の症例はまだ原因が不明.

▼分類

 骨格筋遺伝子の変異や発現調節異常により,筋線維蛋白の喪失や機能異常が生じ,筋線維が壊死・変性を起こし筋萎縮と筋力低下が進行する.遺伝形式により常染色体優性(1型),常染色体劣性(2型)に分類される.現在,1型はA~Hの8型,2型はA~Zの26型が同定されている.LGMDのなかでは,常染色体劣性遺伝をとるLGMD2AとLGMD2Bとが多い.その他の多い病型として,筋細胞膜蛋白であるサルコグリカンの各種遺伝子変異によるLGMD2C~2F,ジストログリカンの遺伝子変異によるLGMD2Pが知られる.常染色体優性遺伝の1型はLGMDの5%以下とまれである.

LGMD2A(カルパイノパチー)

 筋細胞内蛋白分解酵素カルパイン3の遺伝子変異による.頻度は本邦のLGMD症例の30%程度といわれている.発症は6~18歳頃までが多い.肩甲骨周囲の筋を含む四肢近位筋が障害される.血清CKは数百~1万IU/L程度に上昇する.筋病理では筋線維内の構築の乱れを示す分葉線維がめだつ.臨床的に顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーと区別が難しい例がある.

LGMD2B(ジスフェルリノパチー)

 筋細胞膜蛋白であるジスフェルリンの遺伝子変異による.同様に頻度は本邦のLGMD症例の30%程度といわれている.発症年齢は15~35歳.下肢が最初に障害され,典型例では腓腹筋が最初に障害され,つま先立ちが困難になる.遠位筋の障害が目立つ場合,かつては三好型(遠位型)ミオパチーとよばれた.進行に伴い上肢下肢の近位筋障害が目立って

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?