疾患を疑うポイント
●典型的な症状は,特定の頭位や頭位変換で誘発される,持続が1分以内の回転性めまい.
●蝸牛症状(聴覚異常)やほかの神経徴候は伴わない.
学びのポイント
●めまいの原疾患のなかで最も頻度が高い.
●特徴的な眼振により容易に診断できる.
●耳石置換療法によりただちに治療可能である.
▼定義
卵形囊から脱落した耳石の一部が半規管内に迷入し,めまいを生じる疾患.
▼病態
迷入した耳石が頭位変化により半規管内を移動すると,異常な内リンパ流動が生じてクプラが偏倚し,めまいが生じる(半規管結石症).迷入した耳石がクプラに付着し,クプラが耳石の重みで重力方向に偏倚する場合もある(クプラ結石症).
▼疫学
めまいの原疾患のなかで最も多い.加齢とともに増加し,女性にやや多い.
▼分類
迷入した半規管により,前半規管型,外側半規管型,後半規管型に分類される.外側半規管型ではクプラ結石症も多い.
前半規管型はきわめてまれであるため,本項では割愛する.
▼診断
特徴的な眼振により診断する.後半規管型良性発作性頭位めまい症は,坐位から右下または左下懸垂頭位にした際に〔Dix-Hallpike(ディックス-ホールパイク)法〕,どちらかで回旋性眼振が出現することが特徴で,坐位に戻すと逆向きの回旋性眼振がみられる(図10-94図).右下懸垂頭位で右向き回旋性眼振(眼球の上極が患者の右耳の方向に向かう急速相をもつ回旋性眼振)がでれば,右後半規管型である.
外側半規管型良性発作性頭位めまい症は,右下頭位と左下頭位で(supine head-roll test)方向が逆転する方向交代性眼振が特徴である(図10-95図).外側半規管型は,半規管結石症とクプラ結石症で眼振の方向が異なり,方向交代性向地性(下向性)眼振であれば半規管結石症,方向交代性背地性(上向性)眼振であればクプラ結石症と診断する.半規管結石症であれ