診療支援
治療

2 汎自律神経障害
pandysautonomia
林 理之
(はやし神経内科・院長)

疾患を疑うポイント

●小児~中年期の発症が多い.日本での発症平均年齢は30歳前後である.欧米では平均40歳とされている.

●急性ないし亜急性発症の,広範な自律神経不全症状を特徴とする.

▼定義

 1969年にYoungがpandysautonomiaの第1例を報告したときは,急性発症で,特発性,交感神経系も副交感神経系も障害されるが,ほかの体性神経系の症状はなく,完全に回復した症例であった.その後,同様の症例が蓄積されたが,完全に回復することはまれで,むしろ不完全回復が多いことが指摘された.一方,pandysautonomiaという用語は広範な自律神経系を系統的に障害する点を共通点にするが,慢性例や症候性の症例,体性神経も明らかに障害されている症例にも使われるようになり,疾患概念が混乱した時期があった.2000年にVerninoが節性ニコチン性アセチルコリン受容体に対する自己抗体による自己免疫疾患であることを発見し,autoimmune autonomic ganglionopathy(AAG)と名づけた.これによってYoungのプロトタイプに近い,急性・亜急性発症で汎自律神経障害を呈するが体性神経症状はあっても軽微な一群は自己免疫疾患による臨床疾患概念として確立した.

▼病態

 抗節性ニコチン性アセチルコリン受容体抗体によって交感神経および副交感神経の神経節が障害される広義のニューロパチーが生じ,それによって交感神経系と副交感神経系の機能低下が現れ,自律神経不全症状を呈する.

 自律神経不全症状の内訳を表10-59に示すが,起立性低血圧と発汗低下が多い.欧米での報告ではまれであるが,日本の症例では精神症状が報告されており,ethnic variationとされている.

▼疫学

 刊行されている日本の文献では1975~2008年までの33年間で29例報告されている.

▼診断

 急性ないし亜急性

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