診療支援
治療

3 アディー症候群
Adie syndrome
林 理之
(はやし神経内科・院長)

疾患を疑うポイント

●学童期から中年期の発症が多く,女性の発症が多い.

●まれな疾患で,自覚症状に乏しく,偶然の機会に瞳孔が散大していることに気づいて受診することが多い.

▼定義

‍ 強直性瞳孔(tonic pupil)と良性腱反射消失(benign areflexia)を主徴とする.

▼病態

 強直性瞳孔は毛様体神経節ないし短毛様体神経の障害によって,良性腱反射消失は腱反射回路の介在ニューロンの障害によって生じるとされている.初発では強直性瞳孔は片眼のことが多く,良性腱反射消失は下肢に多い.経時的に緊張性瞳孔が片眼から他眼に広がったり,腱反射が消失する部位が増えたりすることがあることから,経過は段階的に進行する場合がある.発症の原因は明らかにされていない.強直性瞳孔は糖尿病などによる末梢性ニューロパチーに合併することもあるので,Adie(アディー)症候群に固有の病態ではない.

▼診断

 強直性瞳孔は羞明以外に特異的症状に乏しい.若年者で毛様体麻痺が強いときは調節障害のために近いところの物がぼやけて見えることがある.良性腱反射消失には自覚症状がない.

強直性瞳孔のベッドサイド診断

 急性発症の症例では発症早期の瞳孔は不整円形に散大しているが,その後は月単位で徐々に縮瞳するので瞳孔径は病期による.対光反射も輻輳反射も一見消失しているようにみえるが,どちらも数十秒から分単位でゆっくりと縮瞳するので強直性と名づけられている.しかも輻輳反応のほうが大きい(強直性瞳孔のlight-near dissociation).対光反射の診察には暗室と明室で比べる必要がある.

強直性瞳孔の薬物点眼試験

 強直性瞳孔は発症後一定の時間が経つとコリン作動薬に対して脱神経過敏を獲得しているので,縮瞳薬として使われているコリン作動薬を健常眼なら縮瞳しない程度の低濃度で点眼しても縮瞳することが知られており,診断に有用である

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