疾患を疑うポイント
◉Werdnig-Hoffmann病
●生後6か月以内に発症する.
●妊娠中から胎動が少なく,新生児期にフロッピーインファントの状態を呈する.
●坐位保持不能,哺乳困難,嚥下障害,誤嚥,呼吸不全がみられる.
▼定義
survival motor neuron 1(SMN1)遺伝子の欠失または変異により,脊髄の下位運動ニューロンと脳神経運動核の一部の変性に基づく進行性の筋萎縮,筋力低下を生じる疾患である.SMAは重症度・発症年齢・経過によって4つのタイプに分けられる.Ⅰ型〔Werdnig-Hoffmann(ウェルドニッヒ-ホフマン)病〕は生後6か月以内に発症し,重症型である.Ⅱ型〔Dubowitz(デュボビッツ)病〕は1歳6か月未満で発症する中間型で,Ⅲ型〔Kugelberg-Welander(クーゲルベルグ-ウェランダー)病〕は1歳6か月~20歳で発症する軽症型である.成人期以降に発症するタイプをⅣ型とし,最も軽症である.以下はⅠ型(Werdnig-Hoffmann病)について述べる〔本章→も参照〕.
▼診断
確定診断にはSMN1遺伝子変異を証明する必要がある.Ⅰ,Ⅱ型の95%にSMN1遺伝子欠失が認められ,Ⅲ型の約半数,Ⅳ型の1~2割でSMN1遺伝子変異を認める.遺伝子診断が可能になって,筋生検はほとんど行われなくなった.
▼治療
嚥下困難に対する経管栄養や,人工呼吸管理が必要となる場合がある.遺伝学的検査によりSMN1遺伝子の欠失または変異を有し,SMN2遺伝子のコピー数が1以上であることが確認された場合,SMN2遺伝子のスプライシングを調節して機能性SMN蛋白質の産生を増加させることを目的としたアンチセンス・オリゴヌクレオチド薬が用いられる.その他,アデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子治療薬の開発も行われている.
▼予後
生後6か月以内の発症で,呼吸筋の筋力低