診療支援
治療

3 ウェスト症候群
West syndrome
廣瀬 源二郎
(浅ノ川総合病院・脳神経センターてんかんセンター・センター長)

疾患を疑うポイント

●精神運動発達遅延のある1歳未満の乳児で乳児スパズム(両手両足を上に伸ばし,頭部落下とともに体幹が急激に折れ曲がるアラーの神に祈りを捧げる礼拝様の点頭発作)がある患児.

▼定義

 1歳未満乳児で精神運動発達遅延があり,乳児スパズムがあり,脳波記録でヒプスアリスミア(hypsarrhythmia,高振幅多形性δ徐波が時間的・空間的に無秩序に山のように無律動にみられる)がある難治性潜因性全般てんかん症候群.

▼病態

 病因の全く不明な患児と既知の結節性硬化症Down(ダウン)症候群フェニルケトン尿症Aicardi(アイカルディ)症候群などの疾患に合併する症候性本症候群がある.

▼疫学

 わが国では出生1万に3.1人,生後3か月から9か月に多くみられる.岡山県の小児てんかん疫学調査では13歳以下の全小児てんかんの4.93%を占める.

▼分類

 原因不明の潜因性West(ウェスト)症候群と基礎疾患のある症候性West症候群がある.基礎疾患としては上記の疾患群以外に水頭無脳症,裂溝症,多小脳回症などの神経細胞遊走障害や先天性脳感染症,周産期低酸素性虚血性脳症,ピリドキシン欠乏症などでもまれにみられる.

▼診断

 1歳未満の精神運動発達遅延児に,特徴的な乳児スパズムがみられ,脳波でヒプスアリスミアがあることで診断する.最終診断には脳波が不可欠である.

▼治療

 ACTHを体重1kgあたり0.01~0.015mg筋肉注射(通常テトラコサクチドを使用)を1日1回投与,2週連続投与.発作抑制は報告により異なるが42~87%あるとされる.副作用は副腎皮質ステロイドと同様であり注意を要する.

 抗てんかん薬ビガバトリンが本症に適応あり,わが国でも2016年上市され処方可能であるが,視野狭窄の副作用があり,登録された施設でのみ処方できる.

▼予後

 一般に予後のよくない疾患であるが,特にその基礎となる

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