診療支援
治療

2 つつが虫病
tsutsugamushi disease,scrub typhus
近藤 敏行
(山形県立新庄病院・内科)

▼定義

 ツツガムシ(小型のダニ)に噛まれて感染するリケッチア感染症で,Orientia tsutsugamushi(オリエンティア・ツツガムシ)が病原体である.

▼病態

 ツツガムシは地中に生息する幼虫の時期に地上に現れて哺乳動物に吸着するが,病原体を保有する幼虫がヒトの皮膚を刺し感染する.

 ツツガムシの種類は地域ごとに異なり,活動時期や保有する菌株も異なる.わが国では6つの菌株が認識されており,Kato,Gilliam,Karp株が強毒株で,Kawasaki,Kuroki,Shimokoshi株が弱毒株である.東北地方に分布するアカツツガムシは夏期に活動し,Kato株を保有する.フトゲツツガムシはGilliam株やKarp株を,タテツツガムシはKawasaki株やKuroki株を保有し,関東や九州で秋から初冬にかけて活動する.フトゲツツガムシの一部は東北~北陸地方で春から初夏にも活動する.

▼疫学

 かつては夏期に,山形県,秋田県,新潟県の3県を中心に河川領域で発生する風土病として知られていた(古典型つつが虫病).第二次世界大戦後は,夏期以外に全国各地で発生していることが判明した(新型つつが虫病).近年も本邦から年間300~500人の感染があり,東南アジアでの報告も増えている.輸入感染症としても注意が必要である.

▼診断

 5~14日の潜伏期間を経て,発熱や頭痛,倦怠感で発症し,高熱に続いて淡い不整形の紅斑が出現する.皮疹は腹部から始まり四肢に広がるが,手掌には生じない.高率に刺し口を認め,中心部に黒色の痂皮,周囲は紅斑を呈する無痛性の丘疹である.腋窩や会陰部などの毛髪部位に多いため,注意深く診察する.リンパ節腫脹もみられる.

 CRP強陽性,肝機能障害を呈し,重症例では血小板減少を伴う.ペア血清による抗体価の有意な上昇で診断する.専門施設に限られるが,培養やPCR法による診断も行われ

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