診療支援
治療

3 クリプトコックス症
cryptococcosis
泉川 公一
(長崎大学大学院教授・臨床感染症学)

疾患を疑うポイント

●HIVやステロイド使用などによる細胞性免疫異常時に罹患しやすい.

●健常者で,健診などで胸部異常陰影(主に結節影)を呈し,肺癌との鑑別を指摘されるケースも多い.

●脳髄膜炎では,髄液刺激症状を示さず,性格変化などが診断のきっかけとなることもある.

学びのポイント

●世界的にはHIV患者の増加を背景に最も頻度の高い深在性真菌症.

●肺が侵入門戸となることが多く,中枢神経系へ親和性が高く脳髄膜炎を呈し,予後不良となる.

●真菌症のマーカーである(1→3)-β-D-グルカン測定は有用ではない.

▼定義・概念

‍ 酵母であるクリプトコックスによる感染症である.本菌は鳥類の堆積した糞の中に多く存在している.日和見状態の患者のみならず,健常人にも感染,発症することがある.Cryptococcus neoformans呼吸器系中枢神経系の親和性が高く,病巣を形成しやすい.諸外国では,HIV感染患者の日和見感染症として特に重要で,脳髄膜炎の予後は不良である.

▼病態・分類・疫学

‍ C. neoformansは鳥類の糞などの中で増殖し,ヒトへは本菌の吸入により経気道感染する.血行性に播種し皮膚,リンパ節,網内系などに病巣を形成することがあり,特に,中枢神経系との親和性が高く脳髄膜炎を呈することもある.クリプトコックスは細胞内寄生するために細胞性免疫が免疫の主体をなし,病理学的に肉芽腫を形成する.感染危険因子は,ステロイド薬使用,糖尿病,HIV感染などが重要である.一方,健常人にも感染し発症することが特徴である.治療方法や治療期間が異なるため,病型は基礎疾患を有する場合と有さない場合とに分け,脳髄膜炎の合併の有無も鑑別する必要がある.

▼臨床症状・診断

 肺クリプトコックス症の症状は咳嗽,喀痰,発熱などである.無症状で,胸部X線写真による健診で偶然に発見される場合も少なくない.重度の免疫不全

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