診療支援
治療

(3)ヒトヘルペスウイルス8感染症
Human herpesvirus 8(HHV-8) infection
岡田 賢司
(福岡看護大学教授・基礎・基礎看護部門)

 ヒトヘルペスウイルス8(Human herpesvirus 8:HHV-8)は1994年にエイズに合併したKaposi(カポジ)肉腫から発見された.8番目のヘルペスウイルス〔本章「単純ヘルペスウイルス感染症」の項の表11-17参照〕で,Kaposi肉腫関連ヘルペスウイルス(Kaposi sarcoma-associated herpesvirus:KSHV)ともよばれる.ヒトに悪性腫瘍を起こす「癌ウイルス」であり,Kaposi肉腫以外にも原発性滲出性リンパ腫(primary effusion lymphoma:PEL)や多中心性Castleman(キャッスルマン)病(multicentric Castleman disease:MCD)などリンパ増殖性疾患の発症にも関与する.抗体陽性率は地域差があり,欧米,アジアでは低く(5%未満),アフリカで高い(20~50%).日本人では健常者の1%が抗体陽性と報告されている.

 感染様式は,不明な点が多い.唾液,粘膜分泌液を介した経口,性交渉,母子感染などが推定されるが,エイズ合併Kaposi肉腫患者のほぼ全員が男性同性間性的接触者(men having sex with men:MSM)であることから,MSMの性行動と関連している可能性がある.生体内におけるリザーバーはB細胞で,感染者の唾液中に比較的高いウイルスコピー数が検出される.

 潜伏感染が主で,潜伏感染関連核抗原LANAはHHV-8の病原性に重要とされる.

参考文献

1)感染症専門医テキスト作成委員会:単純ヘルペスウイルス感染症,水痘・帯状疱疹ウイルス感染症.日本感染症学会(編):感染症専門医テキスト(改訂第2版).pp814-822,南江堂,2017

2)木村 宏,吉川哲史:単純ヘルペスウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルス.日本小児感染症学会(編):日常診療に役立つ小児感染症マニュ

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