診療支援
治療

11 エンテロウイルス感染症
enterovirus infection
細矢 光亮
(福島県立医科大学教授・小児科学講座)

疾患を疑うポイント

●夏季に流行する急性熱性疾患ではエンテロウイルス感染症を疑う.

学びのポイント

●エンテロウイルスは,夏季の急性熱性疾患にかかわる病原体の代表.

●その他,発疹症,手足口病,ヘルパンギーナ,無菌性髄膜炎,急性出血性結膜炎,急性髄膜炎,急性脊髄炎・脳炎などの原因になる.

▼定義

 エンテロウイルスには,ポリオウイルス,エコー(enteric cytopathogenic human orphan:ECHO)ウイルス,Coxsackie(コクサッキー)ウイルスがあり,コクサッキーウイルスはさらにA群とB群に分類される.1969年以降に発見されたウイルスに対しては,エンテロウイルスとしての通し番号が付されている.近年,ウイルス遺伝子の塩基配列を基にした分子系統解析により,エンテロウイルスは,ヒトエンテロウイルス(human enterovirus:HEV)A,B,C,Dの4つのウイルス種(species)に細分類されている(表11-16)

▼病態

 エンテロウイルスの一般的な感染経路は糞口(fecal-oral)感染あるいは飛沫感染によるヒト-ヒト感染である.ウイルスは通常の環境では容易には失活されず,間接的に経口感染しうる.ウイルスは体内に侵入して咽頭や下部消化管に感染し,扁桃,深部頸部リンパ節,パイエル板,腸間膜リンパ節などで増殖する.増殖したウイルスの一部が血液中に入り(ウイルス血症),血液を介して種々の臓器に運ばれ,各臓器で再び増殖して組織傷害を引き起こし,さまざまな臨床症状をきたす.潜伏期は通常3~6日である.呼吸器系へのウイルスの排泄は1週間程度であるが,糞便への排泄は発症から2~3週間持続する.不顕性感染においてもウイルスは糞便に排泄され,感染源となる.

▼疫学

 熱帯地域では季節性に乏しいが,わが国を含む温帯地域では主に夏季に流行し,夏の急性熱性疾患にかかわる

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