疾患を疑うポイント
●末梢血で,花弁様核を有する成熟T細胞を認めること.
●抗HTLV-1抗体が陽性であること.
▼定義
ヒトレトロウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)感染によって発症する疾患群である.HTLV-1感染者のほとんどはキャリアの状態で経過するが,一部の感染者では,下記疾患を発症する.
●成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma:ATLL)
●HTLV-1関連脊髄症(HTLV-1 associated myelopathy:HAM)〔第10章の→も参照〕
●HTLV-1ぶどう膜炎(HTLV-1 uveitis:HU)
▼病態
感染経路は,母乳を介する母子感染,性交渉による感染,輸血による感染の3つがあり,1986年以降輸血による国内感染報告はなく,母乳による感染様式も減少しつつある.他方,献血者の抗体保有率の調査では年間約4,000人のキャリアが新たに発生している.HTLV-1感染者のほとんどは生涯にわたって疾患を発症することのないキャリアの状態で経過するが,キャリアの一部にATLL,HAM,HUを発症し治療を要する病態となる.HTLV-1キャリアからの生涯発症率は,ATLLで2~5%,HAMでは約0.25%,HUは約0.1%である.
▼疫学
世界的には1,000万~2,000万人のHTLV-1感染者がいるとされ,国外ではカリブ海沿岸,中央~南アフリカ,パプアニューギニアなどに多く,地域偏在性がある.
国内では約108万人の感染者がいると推定され,これまで九州南西部~沖縄を中心とした西南日本に多いとされていたが,近年東京や大阪など大都市圏の割合も増加している.
▼分類
➊ATLL
ATLLはHTLV-1感染Tリンパ球が腫瘍化し,リンパ球増多,リ
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