診療支援
治療

27 狂犬病
rabies
加藤 康幸
(国際医療福祉大学教授・感染症学)

学びのポイント

●世界の広い地域に分布する致死率がきわめて高い中枢神経感染症.

●海外でコウモリやイヌなどに咬まれた場合にはリスクに応じた狂犬病曝露後予防処置を行う.

▼定義

‍ 狂犬病ウイルス(ラブドウイルス科リッサウイルス属)を病原体とする中枢神経感染症〔第10章のも参照〕.

▼病態

 病原体の宿主は主にコウモリやイヌ科の動物.動物に咬まれる際に病原体を含んだ唾液で受傷部が汚染され感染する.神経細胞に侵入した病原体は中枢神経に運ばれる.中枢神経でウイルスは活発に増殖し,病理学的にNegri(ネグリ)小体を形成する.その後,遠心性に筋肉,皮膚,副腎,唾液腺などに分布するようになる.大脳の病理学的変化は軽度であるが,脳幹や脊髄は広範に障害される.

 潜伏期は通常20~90日だが,1年以上という報告もある.

▼疫学

 日本,オーストラリア周辺の大洋州,西欧,南極などを除き,世界中に広く分布している.推定で年

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