診療支援
治療

【1】病因アレルゲンの同定と回避指導
identification and avoidance instruction for causative allergens
徳山 研一
(埼玉医科大学教授・小児科学/アレルギーセンター)

▼病因アレルゲンをどのように同定するか?

病因アレルゲン同定の意義と留意点

‍ アレルゲンとは特異的IgE抗体を誘導し,さらにそのIgE抗体と反応する抗原であり,さまざまな種類の生物(動物や植物,微生物),あるいは低分子化学物質などに由来する.

 アレルギー性疾患ではアレルゲンの再曝露によりIgE抗体を介してマスト細胞などが活性化されさまざまなアレルギー症状が惹起されるため,病因アレルゲンを同定し,適切な対策(環境調整)をとることはアレルギー疾患の治療・管理上の基本となる.食物アレルギーを例にとると,適切に病因食物・アレルゲンの同定・除去が行われないとアナフィラキシーショックなど生命にかかわる問題が生じることがある.逆に不適切・不必要な食物除去は,心身両面でQOLを著しく障害し,特に小児では発育障害の原因になったりする.このため,原因アレルゲンの正確な同定が必要である.

 一方,原因アレルゲンの同定の際には,アレルギー疾患の症状発現は必ずしもアレルゲンだけによるわけではないことにも留意する.すなわち,アレルギー疾患では発症臓器の過敏性(臓器過敏性)が知られる.例えば喘息では気道過敏性が存在し,家塵ダニ,真菌類などの病因アレルゲンに反応し気道閉塞をきたすことのみならず,ウイルス感染や台風などの気象の変化,運動などといったさまざまな「非アレルゲン刺激」にも反応して症状が出現する.このため,病因アレルゲンの同定は,患者・家族の不要な負担を軽減するうえでも慎重に行う.アレルギー疾患の治療においては,アレルゲン回避は重要であるが,それのみでは症状の改善が得られないことも多く,非アレルゲンを含む包括的な対策が必要なことが多い.

同定への流れ

 アレルゲンの生体への侵入は,経気道(吸入性),経口(食物など),経皮などのルートを介する.それぞれのルートによって出現する症状は侵入局所に限定される場合

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