疾患を疑うポイント
●小児~高齢者のいずれの年齢でも発症しうる.
●じん麻疹は,膨疹,すなわち紅斑を伴う一過性,限局性の浮腫が病的に出没する疾患であり,多くはかゆみを伴う.
●じん麻疹に比べ,皮膚深部ないし粘膜に限局性浮腫が生じた場合は血管性浮腫という.
学びのポイント
●じん麻疹や血管性浮腫の診断は比較的容易だが,適切な治療を行うためには,さまざまな原因が関与することを理解し,病型分類する必要がある.
●致死的リスクの高い病型として,アナフィラキシーを生じやすいアレルギー性じん麻疹と,遺伝性血管性浮腫やACE阻害薬による薬剤性血管性浮腫がある.
●多くの病型の薬物療法の第一選択薬は,非鎮静性抗ヒスタミン薬である.
▼定義
じん麻疹は,膨疹,すなわち紅斑を伴う一過性,限局性の浮腫が病的に出没する疾患であり,多くは痒みを伴う.通常のじん麻疹に合併して,あるいは単独に,皮膚ないし粘膜の深部を中心とした限局性浮腫は,特に血管性浮腫とよぶ.
▼病態
じん麻疹は,皮膚マスト細胞がなんらかの機序により脱顆粒し,皮膚組織内に放出されたヒスタミンなどの化学伝達物質が血管に作用して血管拡張,血漿成分の漏出により膨疹や発赤を引き起こし,同時に知覚神経に作用して痒みを惹起する.じん麻疹におけるマスト細胞の活性化機序として,Ⅰ型アレルギーのほか,さまざまな物理的刺激,外来物質(薬物や食物),運動,体温上昇などに対する過敏性によるもの,明らかな誘因がなく自発的に膨疹が出現するものなどがある.症例により,これらの機序のいずれか,または複数の因子が複合的に関与している.
じん麻疹は,概して,単一の原因によると考えられ,1つの原因を探索しようと試みられるが,実際には,生体側のある種の過敏性亢進(背景因子:じん麻疹を出やすくする因子)に,外因性かつ一過性な誘因(直接的誘因:じん麻疹を起こす引き金)が加わったときに症状が現れ
関連リンク
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