診療支援
治療

4 アトピー性皮膚炎
atopic dermatitis
加藤 則人
(京都府立医科大学大学院教授・皮膚科学)

疾患を疑うポイント

●乳幼児~若年成人に多くみられる.

●痒みを伴う湿疹が左右対側性に出現し,軽快と悪化を慢性に繰り返す.

学びのポイント

●表皮バリア機能低下のため日常生活での軽微な刺激でも非特異的な皮膚炎が生じる.

●瘙痒を伴う左右対側性の湿疹病変が,年代ごとに特徴的な分布を示して出現し,軽快と悪化を繰り返して慢性に経過する.

●治療の3本柱は,薬物療法,スキンケア,悪化因子対策だが,特にステロイド外用薬を主とした抗炎症外用薬が重要である.

▼定義

 増悪・寛解を繰り返す,瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患で,患者の多くはアトピー素因をもつ.なお,アトピー素因とは①気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎,アトピー性皮膚炎のうちいずれか,あるいは複数の疾患の家族歴や既往歴,または②IgE抗体を産生しやすい素因のこと.

▼病態

 表皮,なかでも角層の保湿因子の減少によるバリア機能の低下のために,汗や唾液,衣服との摩擦など日常生活での軽微な刺激で非特異的な皮膚炎(=湿疹)が生じる.皮膚炎に伴う痒みのために皮膚を瘙破すると,その刺激で皮膚炎がさらに悪化する.炎症を起こした皮膚では表皮角化細胞のターンオーバーが亢進し,保湿因子を産生する時間が減るため,ますます皮膚のバリア機能が低下し,易刺激性が亢進する.

 バリア機能が低下した皮膚から侵入した食物や家塵ダニなどのアレルゲンによるアレルギー炎症で,皮膚炎はさらに悪化する.

▼疫学

 2000~2002年に行われた厚生労働科学研究によると,日本のアトピー性皮膚炎の有症率は乳幼児期で10~13%程度,学童期で10%程度,大学生で8%程度であった.

▼診断

 ①瘙痒,②特徴的皮疹と分布,③慢性・反復性経過(乳児では2か月以上,その他では6か月以上続くこと),の3基本項目を満たすものを,症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断する(表12-18)

瘙痒,経過

 いずれも

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