診療支援
治療

(2)川崎病
Kawasaki disease
小林 徹
(国立成育医療研究センター・企画運営部部長)

疾患を疑うポイント

●特徴的な皮膚粘膜症状を伴う乳幼児の発熱.

●抗菌薬を使用しても解熱しない.

●冠動脈の拡大性病変を示す.

学びのポイント

●小児期に発症する原因不明の汎血管炎症候群であり,無治療では冠動脈瘤を25%に合併し2%が心筋梗塞により死亡する.

●6主要症状のうち,5症状以上を満たした患者を川崎病と診断する.

●急性期の抗炎症治療として,免疫グロブリン超大量療法とアスピリンの併用が標準的治療として用いられている.

▼定義

 乳幼児に好発する原因不明の汎血管炎症候群であり,現在先進国における小児期発症の後天性心疾患としては最大の原因である.

▼病態

 川崎病の主病態は,免疫系の異常な活性化によって惹起される中動脈を中心とした汎血管炎である.なんらかの起因によって活性化されたT 細胞やマクロファージが大量の炎症性サイトカインを放出し,汎血管炎が惹起される.炎症の進展に伴い内外弾性板が破壊され,冠動脈は遠心性に拡大する.川崎病はself-limitingな疾患であるため,無治療でも数週間の経過で臨床症状や血管炎は消失するが,血管炎の結果生じた動脈瘤によって遠隔期にさまざまな心血管イベントを生じることが臨床的な問題となる.

▼疫学

 第25回川崎病全国調査では2018年に17,364人の新規川崎病患者の発症が報告された.疫学的には罹患率は1歳近辺にピークを認める単峰性の分布であり(約90%の症例が4歳以下),男児の罹患率が女児に比べ高く(性比約1.3~1.5倍),季節変動がある(秋は少なく冬に多い).

▼診断

 川崎病の診断の手引き(改訂第6版)を参考とし,①発熱,②両側眼球結膜の充血,③口唇・口腔の発赤,④不定形発疹,⑤四肢末端の変化,⑥非化膿性頸部リンパ節腫脹の6つの主要症状のうち5項目以上を満たした場合川崎病と診断する.ただし,症状が4項目のみであっても冠動脈病変を認める場合は川崎病と診断

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