診療支援
治療

(1)顕微鏡的多発血管炎
microscopic polyangiitis(MPA)
川口 鎮司
(東京女子医科大学臨床教授・膠原病リウマチ内科)

疾患を疑うポイント

●比較的高齢者に原因不明の糸球体腎炎,肺胞出血や間質性肺炎がみられる.

●全身倦怠感,易疲労感,発熱などの慢性炎症症状が認められる.

学びのポイント

●全身性血管炎のなかで病変の主座が小型血管にあり,免疫複合体の沈着がない血管炎.

●診断にはANCAが主要検査項目となっている.

●治療としては,副腎皮質ステロイド,シクロホスファミドやアザチオプリン,メトトレキサートなどの免疫抑制薬が必要.

▼定義

 小型血管炎を主な病態とし,抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)陽性となる,ANCA関連血管炎(ANCA-associated vasculitis:AAV)の1つである.ANCAには,MPO(myeloperoxidase)型とPR3(proteinase 3)型の2種類が知られている.日本人では,MPO-ANCAが84~97%で陽性となるが,英国ではPR3-ANCAが半数以上で陽性となる.人種によって,ANCAの種類の発現頻度は異なっている.

▼病態

 AAVの病態として,ANCAの病原性が重要である.MPO-ANCAを誘導させたマウスでは,半月体形成性糸球体腎炎が生じる.さらに,AAVの病態形成にはANCAによる好中球の過剰な活性化があり,種々のサイトカインの活性化を介して,血管内皮細胞が障害を受けた結果であるとする仮説も提唱されている.

 ANCAが,好中球を過剰に活性化する過程で,TNF-αなどのサイトカインを過剰産生すると同時に,好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps:NETs)の形成誘導にも関与している.このNETs制御異常が,さらにANCA産生の要因となっていることもわかってきた.NETs分解にかかわる生体内の酵素は,DNA分解酵素(DNase I)で

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