診療支援
治療

(2)多発血管炎性肉芽腫症
granulomatosis with polyangiitis(GPA)
佐田 憲映
(岡山大学大学院准教授・腎・免疫・内分泌代謝内科学)

疾患を疑うポイント

●難治性の副鼻腔炎や中耳炎.

●上記に加えて血尿や蛋白尿など検尿異常を認める.

学びのポイント

●上気道から始まり,下気道,腎障害と至る特徴的な臓器障害,臨床経過から本症を早期に疑い,診断することで予後が改善している.

●組織学的に診断が困難なこともあり,補助的にANCAを測定することが重要.

●治療の第一選択は副腎皮質ステロイド薬とシクロホスファミドの併用.シクロホスファミドの代替薬としてリツキシマブも推奨されている.

▼定義

 中小型血管炎の1つであるANCA関連血管炎に分類され,病理学的には気道における肉芽腫性炎症を特徴とし,腎臓では壊死性半月体形成性腎炎を認める.

▼病態

 免疫複合体を介さない中小型の壊死性血管炎により,眼窩,副鼻腔,中耳などの上気道ではしばしば肉芽腫性病変が骨破壊性に進展する.気管,気管支,肺などの下気道では肉芽腫性病変を反映し気道狭窄や肺結節性病変・空洞病変を生じる.腎では急速進行性腎炎症候群となり血尿蛋白尿を伴って腎機能が低下していく.

▼疫学

 2016年の厚生労働省指定難病受給者証交付者は2,708名である.欧米とわが国では,多発血管炎性肉芽腫症とその他のANCA関連血管炎の割合が大きく異なっている.抗好中球細胞質抗体抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)のうち,一般的にはプロテイナーゼ(PR)3-ANCAが特異的抗体とされているが,わが国ではPR3-ANCA陽性例は少なく,ミエロペルオキシダーゼ(MPO)-ANCA陽性例が多い.

▼分類

 上気道(眼窩,副鼻腔,中耳など)に限局する限局型と下気道・腎などその他の臓器にも血管炎を認める全身型,重篤な臓器障害を伴う重症型に分類される.

▼診断

 参考となるGPAの診断基準を表13-18に示す.

 血管炎による臓器障害を認める部位からの生

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