疾患を疑うポイント
●関節痛,四肢の疼痛の患者で,ばち状指の患者がいたら本症を疑う.
●肺癌の合併を見落とさない.
▼定義
ばち状指,骨膜炎,関節炎を三徴とし,進行すると長管骨遠位慢性骨膜炎による新規骨膜下骨形成と滑膜炎による関節液貯留をきたす症候群.
▼分類
一次性と二次性に分類される.一次性HOAには主として小児期に発症し家族性に認められる強皮骨膜症,肥厚性皮膚骨膜症(常染色体優性遺伝)などがある.一方,二次性HOAは,通常,成人後に発症し肺疾患,心疾患,肝疾患,消化器疾患,種々の悪性腫瘍や炎症性疾患,甲状腺機能亢進(甲状腺性肢端症),後天性免疫不全症候群などに随伴して認められる.特に肺癌の随伴症状として臨床的に重要.
▼疫学
有病率は17.8/100万人.好発年齢は40~50歳代.女性にやや多い.
▼診断
➊症状
ばち状指は必発.骨膜炎の症状として,主に前腕部や下腿骨の末梢側に圧痛や灼熱感が生じる.関節炎は少関節型と多関節型がある.関節痛は一過性のものから強い持続性のものまでさまざまあり,対称性に生じる場合が多い.一次性HOAの強皮骨膜症では,顔面の皮膚に深い皺が目立つ顔貌(獅子様顔貌)と手足の拡大(スペード様手掌,足蹠)を認める.
➋検査
二次性HOAの場合,それぞれの原疾患に伴う臨床検査異常を示すが,特徴的な臨床検査成績はない.リウマトイド因子や抗核抗体は通常陰性である.四肢の単純X線検査で,長管骨の遠位骨幹部に対称性に骨膜下骨新生像を認める.骨シンチグラフィで長管骨の骨皮質に沿った直線的な集積が対称性に認められる.
▼治療
ばち状指の大部分は無症状であり,通常,治療の必要はない.二次性HOAの伴う関節痛や骨痛に対しては,原疾患をすみやかに同定して,その治療を行うことが最も重要である.NSAIDs,副腎皮質ステロイド薬やビスホスホネート製剤が疼痛軽減に有効である.
▼予後
一次性H
関連リンク
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/2 ばち指
- 今日の整形外科治療指針 第8版/Kniest骨異形成症
- 今日の整形外科治療指針 第8版/骨幹異形成症(Camurati-Engelmann病)
- 今日の整形外科治療指針 第8版/軟骨外胚葉異形成症
- 今日の整形外科治療指針 第8版/多発性軟骨性外骨腫症
- 今日の整形外科治療指針 第8版/McCune-Albright症候群
- 今日の整形外科治療指針 第8版/屈指症,斜指症
- 今日の整形外科治療指針 第8版/Heberden結節
- 今日の整形外科治療指針 第8版/下腿の痛みのとらえ方/診断手順
- 今日の整形外科治療指針 第8版/Morton病
- 今日の整形外科治療指針 第8版/母趾種子骨障害
- 今日の診断指針 第8版/太鼓ばち指